宙に伸ばした 鉛のような腕は 何を掴むわけでもなく ただ戸惑い、漂い
空に伸ばした 綿毛のような夢は 彼を救うわけでもなく ただ流され、運ばれ
羽根ならほらそこに 根元からぽっきり折れているけど 足ならまだここに でも無駄とはっきり知っているから
彼は嘆き 彼女は笑う
それは渋い葡萄酒 それは甘いアールグレイ
口つけたグラスに継ぎ足される砂 飲み干したカップに 注がれる蜜
彼が見たのは、銀幕の向こう側 すなわち繰り返す悪夢 すれ違うのは必然
彼女が見たのは、金縁の継ぎガラス すなわち溢れ出す淫夢 想い通ったのは偶然
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