★KINPEI★
◎ ■トラブル ◎

その問題の一週間。

それまで、私はこんなにも人間付き合いが下手だとは思わなかった。
普通に生活している分には、いろんな部分に目をつぶって生きていけるのに
一つの目的をもって進まなくちゃいけない時
意思の疎通が出来ない人を、無視していけないがゆえに
私はすごくすごく苦しんだ。

公演の成功というところを目指して
思いを伝えたり、
やり方を変えたり。
でも、歯車が狂っている時って、何をやってもうまくいかない。

良かれと思ってする事はみんな報われず
努力はことごとく無駄になり
相手の意見はその場限りでころころかわり
ともかく、その人と一緒に居るだけで
話をするだけで、ストレスになるようになってしまった。

それでも、メンバーである以上
仲良くやっていくしかなくて
そして、分かってないが故の
暴言である事も分かっていて。

でも、説明しても理解できないのは私の所為じゃないし
そういう状況に陥ったのは自分の所為なのに。
簡単に責任転嫁して私を責め続けるその人と
どう折り合いをつけていけばいいのかわからず
でも、そういう悪感情をメンバーに打ち明ける事も
ためらわれ、誰にも言えず、追い込まれていた。

そういう状況にあって
偏見を持たない彼女の性格と
古株じゃないという気楽さもあって。

自分の追い込まれている精神状態を
少しだけ話した。




そしたら

隣で支えてくれた。




私はあまり人を頼らない性質なので
こういう時の愚痴も、言ってすっきり、
聞いてくれてありがとう。で終わらしちゃう。

自分で解決するし、自分で立っていたいって思う。
そういう肩肘はってるのに



胸貸すから泣けば?

みたいな。


一人で立ってないで、寄りかかりなよ

って感じのメールが

優しい言葉のメールが

いっぱい来た。


もちろん、そういう言葉で言ってきたわけじゃなくて

月がきれいだよ。

とか

風が気持ちいいね。

とか


毎日、何通か、優しいメールを送ってきてくれてた。

毎日。


話せば親身になってくれるというスタンスではなく

常に気にしてくれているメール。

そういうメールが届くたびに泣きそうな自分がいた。

何をやってもうまくいかない自分に

優しさをくれるそのメールに。


私、立ち直るときは自分で、って思ってた。
誰かの言葉で、じゃ無くて自分の「えいやっ」って
気持ちで立ち直るものだと思ってた。

けど、その時のそのメール達は
自分ひとりでって思っている
他人には介入させずに居た部分で
支えてくれるメールだった。

でも、でも、でも。
自分が立ち上がるときに、力を借りたら、
それが必要なものになっちゃう。

骨折したときに、ボルトを入れて、
それが骨と同化していくように。

同化しちゃう。

立ち直ったね、って言われてはずされたら
その時、すごく痛い。

今その言葉にすがれば
今は楽かもしれない。

でも、すがってしまったら
今後それは私に必要な物になってしまう。
そんな風にずっとそばに居てくれる人じゃないのに。

それが分かってたから。
彼女の優しさから、逃げてた。
その言葉から微妙にはずしてレスしてた。

ボルトじゃなくて
ギブスで居てもらうために。

なのに、なのに、なのに。

風が強くて、冷え込んだその日。

優しいメールを拒否できなくなった。

頼っちゃだめってガードしてたのに

そのメールはガードを解いて
私の中に飛び込んできてしまった。

あ。
しまった。

みたいな感じで。

困ったなぁと思った。

立ち直ったねって、埋め込まれたボトルをはずされたら
すごく痛いけど。痛みを伴うけど。

そうなるの知らずに
優しい言葉かけてくれるのしってたけど。

でも、もうだめだなって思った。

入ってきちゃった物はもう流せない。

だから、その優しさを正面から受け止めることにした。
素直に
その腕にくるまれる事にした。

すごく、変なんだけど。
これって全部メール。
会ってたわけじゃなくて
電話で話したわけでもなくて
メール。

それも抽象的な言葉の。


それでもこんなに心が動く事があるんだって
不思議な気がする。

それに

抽象的なメールのやり取りだから
まだ逃げ道はあると思ってた。

でも本当は分かってた。


彼女の優しいメールを受け止めたとき。

彼女に恋をしてると。


友達みたいに、気が合ったときに居ればいいんじゃなくて

ずっとそばに居て欲しい。


初めて人に対して束縛したいと思った。

誰よりも近くに居たいと思った。


そんな風に初めて思った。

   − 2000年08月01日(火) −             next

BACK INDEX
MAIL BBS

My追加

Illustration by : mons45
Design by : [ m  U ]