2008年01月09日(水) |
春のよう/「重力ピエロ」 |
ぽかぽか陽気の日が続く。これも温暖化のなせる技なのだろうか。 すぐに寒気が来ると言うけれども…。 人類に残された時間はあと80年だという説もある。こんな時にどんな文学が可能なのだろう。音楽にしても美術にしてもそうだ。
今日、伊坂幸太郎「重力ピエロ」を読了。とてもおもしろかった。込められている「情報」と「感情」の、この質にしてはとてもよみやすい。
作品中、なんどか繰り返されたネアンデルタール人とクロマニヨン人のエピソード。何万年か共存した後、ネアンデルタールは絶滅する。どう考えても「大虐殺」があったんだ、とする認識は、クロマニヨンの末裔たる我々の現在の所業に鑑み、肯く以外にないように思う。
善と悪、遺伝子と絆、作品中でクローズアップされる、それらの二者択一を迫る生き方は、それこそ「重力」になぞらえることもでき、重力に逆らうようにみえるサーカスの空中ブランコのピエロのように、我々は生き方を選んでもいいんじゃないのかという問題提起があった。 それこそ「大虐殺者」の遺伝子を持って生きていたとしても、という含意もある。 本文中に何度もでてくる「自分で考えろ!」という言い方は、ふいに読者に向いてくる。
ところで。 経営の苦しい弱小書店にずっと本を注文している。 苦しいにもかかわらず無料で配達してくれる。 今日、吉行淳之介「美少女」伊坂幸太郎「アヒルと鴨とコインロッカー」を注文した。
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