帰国中の妹と母といっしょに、銀閣寺の銀福で食事。 観光客の洪水のど真ん中にあるけれど、案内された二階は、山から吹き下ろす風の音だけがしていた。 ここは仕出し屋さんなのだけれど、店内でも食べられる。 駐車場の裏という立地と、「仕出しや」という暖簾と、ひなびたちいさな建物故か、外の喧噪が嘘なぐらい店内はしんとしている。
ここから百万遍の知恩寺へ仕出している「知恩点心」を食べる。 お寺に仕出しているのだから、当然、薄味の精進料理である。
つい最近、マクロビオテックの食事ばかり摂っている妹は、それでも味が濃いという。
光線がとても厳しい日だったけれど、卓の向こう側に坐った母が、みどりがいいねえ、としきりに言う。 ぼくと妹は、代替医療の話ばかりしていて、母に、お茶はほうじ茶のほうがいいよ、などといっていたのだった。
帰りがけに母の席から窓の外を見てみた。 哲学の道がほんの少し見えて、その上に様々な種類の緑色が風にうねっていた。
おもわず「みどりがいいねえ」というと母が「そうでしょう」という。 ふーん、と二人で外を見ていたら、よこから妹が写真に収めていた。
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