堀江敏幸さんの「いつか王子駅で」を、しみじみよいなあ、とおもいながら読んでいます。 時期的には三島賞を受賞した「おぱらばん」と芥川賞受賞作「熊の敷石」の間に書かれたものです。
何がよいのか。 独特の空間が見えてくること。 その空間にとても親しみを覚えるということ。 その空間を作者が丁寧につくりあげ 愛おしんでいるのがとてもよくわかること。 そういうところでしょうか。 また「語り口」といいたいような文体も。
作中登場する瀧井孝作とか島村利正といった、古い作家の作品がたまらなくな読みたくなって、 大昔の日本文学全集をひっくり返し、瀧井孝作「無限抱擁」を発見。 しばらく寄り道して読み耽りました。 なんとも不思議な文章。仮名遣いのせいばかりではなく独特の「言い回し」による精密なスケッチです。 「風景小説」についての言及は「王子駅で」のなかにもでてきますが 魅力的な取り組み、というかほとんどぼくのやり方と似ていて驚いています。 このやり方と、吉行さんの唱えていたディグレッションの連続という方法が 結べているのが堀江作品でもあるような。
残念ながら島村利正の作品は手元にないのですが、是非とも図書館で読んでみたいです。
また、違う「別の小説のありかた」を追求していった有名でもなく、本流でもない、かつての作家たちの作品も読みたいし、(ただし文章の職人のようでもある) 現在の作家のものも読みたいです。
ところで、NHK土曜ドラマ「ウォーカーズ」が好きでみています。 全四回のうち今日は第三回。四国のお遍路さんが題材です。いろんな訳ありで歩いている人たちが自分と格闘するさまを、自分に置き換えて見ています。 立ち止まったら負け、といわれる社会の中で、あえて立ち止まった人たちをとおして自分をみつめる、というか。 原田芳雄、江口洋介、三浦友和、風吹ジュン、など出演者もいいし、 音楽が細野さんというのも いいです。 来週最終回。 たぶん、「生きることが遍路なの」でしょう。
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