散歩主義

2006年11月25日(土) 自分であるために

堀江敏幸さんの「いつか王子駅で」を、しみじみよいなあ、とおもいながら読んでいます。
時期的には三島賞を受賞した「おぱらばん」と芥川賞受賞作「熊の敷石」の間に書かれたものです。

何がよいのか。
独特の空間が見えてくること。
その空間にとても親しみを覚えるということ。
その空間を作者が丁寧につくりあげ
愛おしんでいるのがとてもよくわかること。
そういうところでしょうか。
また「語り口」といいたいような文体も。

作中登場する瀧井孝作とか島村利正といった、古い作家の作品がたまらなくな読みたくなって、
大昔の日本文学全集をひっくり返し、瀧井孝作「無限抱擁」を発見。
しばらく寄り道して読み耽りました。
なんとも不思議な文章。仮名遣いのせいばかりではなく独特の「言い回し」による精密なスケッチです。
「風景小説」についての言及は「王子駅で」のなかにもでてきますが
魅力的な取り組み、というかほとんどぼくのやり方と似ていて驚いています。
このやり方と、吉行さんの唱えていたディグレッションの連続という方法が
結べているのが堀江作品でもあるような。

残念ながら島村利正の作品は手元にないのですが、是非とも図書館で読んでみたいです。

また、違う「別の小説のありかた」を追求していった有名でもなく、本流でもない、かつての作家たちの作品も読みたいし、(ただし文章の職人のようでもある)
現在の作家のものも読みたいです。

ところで、NHK土曜ドラマ「ウォーカーズ」が好きでみています。
全四回のうち今日は第三回。四国のお遍路さんが題材です。いろんな訳ありで歩いている人たちが自分と格闘するさまを、自分に置き換えて見ています。
立ち止まったら負け、といわれる社会の中で、あえて立ち止まった人たちをとおして自分をみつめる、というか。
原田芳雄、江口洋介、三浦友和、風吹ジュン、など出演者もいいし、
音楽が細野さんというのも
いいです。
来週最終回。
たぶん、「生きることが遍路なの」でしょう。


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