| 2004年10月30日(土) |
N`s jazz house vol.9 |
村上春樹さんは、新しい作品がでるごとに執筆中に何を一番よく聞いていたかを書かれることがあります。もともとジャズのお店をやっていた方でもあり、ジャズが出てくるのは当然ですが、「海辺のカフカ」の時はジョン・コルトレーンの「マイ・フェヴァリット・シングス」で、ロックではラディオ・ヘッドでした。
今回の「アフター・ダーク」は題名がもう曲名ですし、登場人物がトロンボーンを吹いているので、最初からカーティス・フラーの名盤「ブルー・スウェット」だと見当がつきました。ハード・パップのこの名盤は古いジャズファンなら必ず聞いている盤だと思います。
だからどうしても、ついトロンボーンのカーティス・フラーに目がいきがちなんですが、この曲の作者でもあり、フラーとの共演者でもあるべーニー・ゴルソンこそ、ジャズ界で重要な位置を占める、コンポーザーにしてアレンジャー、テナーサックス奏者なのでした。
コルトレーンやロリンズなどの天才たちのプレーばかりがジャズではなく、むしろ酒場のダンスミュージックだったジャズの、底抜けの生命力と「粋」を演出していたのはゴルソンたちといっても過言ではないでしょう。
マイルスやコルトレーンががシーンをごろんと変えてしまい、酒場でちゃらちゃらしてられなくなってから、ジャズはとても難しくなりました。 ぼくがジャズに惹かれていったのもそのころです。なんせ音が切れまくっていましたからね。 だけど結局、マイルスが亡くなって、彼の一生を振り返った時、彼の追い求めていたものは生命力が一番宿っている音楽なんだと自分なりに感じてからは、パップもクールもましてラップでさえも、それがジャズなんだと思えるようになりました。
難しくなりすぎたジャズよりもファンクやロック、ソウルのほうが軽々と新しいことをやってのけていて、そのころジャズからは足が遠のきましたね。 だから古いジャズは、ロックやファンクから解釈し直したジャズというか、ジャズと違う目線から入っていくジャズとしてとても新鮮に聞こえてきたんです。
例えばリー・モーガンなんて、とんでもなくファンキーだし、この日記でも紹介した、ソニー・クラークやベニー・ゴルソン、それに当時のマイルスもコルトレーンも、とにかく曲がいいんです。
「いい曲をつくる」という切り口ならば、ベニー・ゴルソンはジャズ史上、屈指の一人にはいることは間違いないでしょう。 ゴルソンの特徴は「ハートウォーミング」であることと、なんといっても「ハーモニーの良さ」。ソロでもむせぶテナーを披露したりもしますけれど、とにかく管二本、あるいは三本のアンサンブルが抜群なのです。
だから彼の仕事は誰かと組んだものが多く、組んだ相手がそれで名盤のリーダーになることが多いですね。まるで「仕事師」。 アート・ブレイキーも、カーティス・フラーもアート・ファーマーも。 そしてなにより若くして逝った、天才クリフォード・ブラウンとの仕事が彼には重要だったのでしょう、「アイ・リメンバー・クリフォード」という傑作を作曲しています。
90年代に入り再評価されだしたベニー・ゴルソン。 ジャズのアレンジャー、コンポーザーとして当然といえば当然のことでした。
そんなこんなでふと自分のジャズのコレクションをみると、ベニー・ゴルソンが入っているのがたくさんあるんです。 特にオススメはカーティス・フラーとの「ブルー・スウェット」ですが、これは村上春樹さんが「持って行ってしまった」んで、あえてアート・ファーマーの「モダン・アート」をあげておきます。
これも名盤中の名盤。6曲目でゴルソン自身、渾身の力を込めてバラードを吹いています。 ピアノはマイルスにスカウトされた頃の、ばりばりの若手だったビル・エパンス。 とにかくジャズがめっちゃ、かっこよかった頃の一枚です。 一曲目から踊れます。うん、たぶん踊れますよ。少なくとも指は鳴らすでしょうね。
不良やってた頃、よく聞きました…。えっ!!!!
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