散歩主義

2003年12月27日(土) メジャーリーガー

今日のNHKBSでは、午後1時から日本人メジャーリーガーを一人1時間ずつ使って、今年の活躍の紹介と彼らへのインタヴューを放送していました。
なんとも贅沢な企画。

順番はヤンキース松井、マリナ―ズイチロー、ドジャース野茂、マリナ―ズ長谷川。佐々木と大家と田口はありませんでした。新庄も。

たしかに彼らの能力は素晴らしいんですが、ぼくがこの散歩主義でもよく書くように、彼らの生活信条に学ぶところが多いでのです。

最初はヤンクス松井。実は今年、松井についての情報をとても多く目にしました。週刊ポスト誌上では、伊集院静氏の興味深いルポが連載されつづけ、彼の野球に対する真摯な態度がとてもよくわかりました。
彼についてぼくが一番印象に残っている言葉は
「自分のコントロールできる事以外は手を出さない」というもの。あたりまえのように聞こえるけれど、逆に言うとコントロールできるものは全力をあげて徹底的にやるべき事をするということ。それが本当に徹底している。
とにかくその状況の中でのベストを尽くす。好不調に関係なく。その姿がまた強調されたインタヴューでした。

次はイチロー。オフシーズンでのまとまったインタヴューは今回がはじめて聴きました。
たぶん日本、アメリカでの選手生活を通じて初めてといっていい「大スランプ」。その経験の内実をを本人の言葉で初めて聴きました。
スランプといっても、安打212本。三年連続200本以上というのは長いメジャーの歴史の中で三人しかいないのです。打率も.312。守備、盗塁の確実さとスーパープレイは何度もチームの勝利に貢献しました。
スランプというのが可哀相なぐらい。

だけど、たしかにあんなに苦しむイチローを見たのは初めてでした。
まずシーズン当初。打率が.250に低迷していた短い期間。なんとバットのヘッドスピードが速くなりすぎて、アタマで打つな!と瞬間的に判断しても、もっと速くからだが反応してバットが球にあたってしまうという、常人では考えられないような世界に入ってしまっていたといいます。
これは原因がはっきりしていたので、アタマの判断に体を従わせ、がまんさせて、狙いを絞りに絞って打つように軌道修正した事で解決。

たしかに、暖かくなるにつれ、イチローのバットは火を吹き、打率も.350まで到達。もちろん首位打者。またしてもイチローの天才伝説にあらたな1ページが、と思っていたところから、信じられないほど打てなくなっていきました。
テレビでも、あのようなイチローを見たことはありませんでした。

イチローは「200本へのプレッシャー」と正直に語ってくれました。それとぼくには各チームがイチローを徹底的に研究し、対策を立ててきたことも大きい要因だと思えました。
それでもイチローは苦しみながらもコツコツとヒットを打ちつづけていきました。あの頃のイチローが何を考えていたのか是非知りたいと思っていたのですが、彼の口から出た言葉は
「ああいう時だからこそ、自分のリズムを崩すまいと思いました。ルーティーンを壊すな、というか。それはとても大事なこと」

これは松井の言葉にも繋がります。じたばたしないんですね。自分を信じ、ベストを尽くし、結果を受け入れる。言葉で書くと簡単なのだけれど…。
いつものアップをする。自分の体調を維持する。試合に集中する。いつも前を向く。それを忍耐強く続ける。
これができないんですよ。

やはりイチローという人は、凄いし、素晴らしいと思いました。

それと松井とイチローに共通しているのは、他人や環境のせいには絶対にしないこと。これは野茂にも長谷川にも共通していました。

今、大リーグの選手と監督が選ぶベストプレイヤーのトップはイチローです。
そして、テッド・ウイリアムス以来、史上二人めの4割打者はイチローをおいて他にはいないだろうといわれています。

今年の苦しみ。ジョークまでしゃべれるようになった英語。過去に存在した、幻のニグロ・リーグ(黒人差別の時代に存在した黒人だけのリーグ。メジャー・リーグは当初、白人のみだった。ニグロ・リーグは驚くべきタレントの集まりだったという)への愛着を語るまでに広がった野球の歴史への興味。
イチローはますますその能力の幅を広げようとしています。問題はあとは年齢だけ。それでも、ここ2,3年のイチローからは目が離せないと思います。

納得の「メジャー」でありましたよ。


 < 過去  INDEX  未来 >


にしはら ただし [MAIL] [HOMEPAGE]