斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
β版
目次 | <<前へ| 次へ>>
2005年06月12日(日) |
仕事用のPCが新しくなった |
仕事用のPCが新しくなった。 会社から支給されているPCである。 僕の所属している会社では、3年間ごとに新しいPCに交換してもらえることになっている。 僕は3台め。 3回めのPC交換を経験する事は、一般企業でいえば永年勤続賞に近い。
・・・だって、不況でおいしい転職先がないんだもの・・・。 と、思いつつ3代めのPCへ。
新しいPCに交換するためには、古いPCからデータをバックアップしなくてはならない。 PC「交換」なので、古いPCと新しいPCを「交換」する。 同時に二台並べてLAN経由で並列化させることができない。 旧PCと引き替えに新PCが貸与されるのである。 なので、旧PCは事前にバックアップを取らなくてはならない。 1週間くらい新旧のPCを並行稼働させてくれれば楽なのに・・・。 融通の利かない会社だ。
まずは、旧PCのデータのバックアップ。 クソ忙しい時期なので、夜遅くにバックアップ作業開始。 僕は、データ類は、全て特定のディレクトリ下に保存することにしている。 ディレクトリをまるごとコピーするだけなので、喫煙コーナーから帰ってきたら作業完了。 問題は、個人データとアプリケーションである。 新PCに移行するためには、iniファイルやメールやIDファイルなどを漏れなくバックアップしなくてはならない。 これはアプリケーションごとにバラバラなので面倒。
そして、問題は個人情報。 旧PCは、厳重に管理されたなかで完全にフォーマットされるらしいのだけれど、僕は、そんなことは信用していない。 僕はセキュリティーに関しては、身内も信用しない。
ぜーんぶのアプリをアンインストール。 個人情報に結びつきそうなファイルは全て消去。 キャッシュやCookieやらメーラーやら個別のアプリやら。 これが意外に時間がかかる。 よくよく考えてみれば、PCは個人情報の塊。 個人情報を完全に消去しようと思うと、かなり面倒なのである。 結果的には、ほとんどOSだけの状態に戻して、OSの設定もリセットすることになった。 増設していたメモリも個人所有物なので、取り外す。 キーボードを取っ払った裏、というワケのわからない場所にあるので、工具でこじ開けてはずす。 気づくと、明け方。
データのバックアップを取りつつ、個人情報を消去する、という作業をしていると妙な気分になる。 データ、設定、個人情報は、新PCに完全に移行される。 いわば記憶だ。 僕の旧PCは記憶を抜き取られていく。 だけど、その記憶は新PCに移行できてしまう。 記憶を抜き取られたPCは何なのだろう?
身体は変わっても記憶は引き継がれる。
HDDの情報を完全に消去し、ドライバーでこじ開けてメモりをはずしつつ、なんだかおセンチになる。 明け方だし。 このメモリを抜き取ったら、このPCは僕の分身ではなくなる・・・。 メモリはHDDの情報とは違って、ただのワーク領域で情報が書き込まれているわけではないのだけれど、物理的にメモリを取り外そうとすると、なんだかおセンチ。
僕の記憶は旧PCから完全に消去された。 僕の痕跡はない。 機械に僕の魂は宿らない。 でも、僕の記憶は新PCに完全に移植される。 身体は死んでも、記憶は生き残る。 情報は引き継がれる。
翌朝、会社で新PCを受け取り、バックアップしたデータを入れ直す。 PC本体は変わったけれど、設定も環境も何も変わらない。 スクリーンセーバーや壁紙からデスクトップといった見た目や、Cookieやブックマーク、辞書、メール、アプリケーション設定にいたるまで、全て同じ。 僕の環境は何も変わらない。
新PCを受け取ったあと、近所のPC屋で中古のメモリを見つけたので、購入して増設。 体感速度は、異様なまでに速くなった。
体感速度は変わったし、筐体も変わったけれど、画面に映る設定も、環境は何ら変わらない。 身体は変わっても、記憶はそのまま。
PCって妙な存在だな、と思う。 「記憶能力」のない機械であれば、機械や道具そのものに何らかの思い入れみたいなものがあるだろう。 時計だとか楽器だとかクルマだとか人形やぬいぐるみ等々。
でも、PCには「記憶能力」があるがゆえに、記憶を抜き取られた機械は僕の抜け殻だ。 そこに僕の魂は存在しない。 ただの道具だ。
僕はPCには思い入れはない・・・。
目次 | <<前へ| 次へ>>
|