斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年05月13日(金) |
中国の反日暴動を無理やり数学的にモデリングしてみる |
中国の反日暴動を見ていて、「割れ窓理論」を思い出した。 僕は、「休日のちょっとしたお遊び」として、参加していた中国の反日デモの参加者が、暴徒化してしまった理由を考えたい、と思った。 僕にとっては、ごくごく普通に見える反日デモに参加した人たちが暴徒化していった様子が気になった。 どうして普通の人が暴徒化していったのだろう? 「割れ窓理論」をWikipediaで調べると下記のように説明されている。
■割れ窓理論
治安が悪化するまでには次のような経過をたどる。
一見無害な秩序違反行為が野放しにされると、それが「誰も秩序維持に関心を払っていない」というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作りだす。 軽犯罪が起きるようになる。 住民の「体感治安」が低下して、秩序維持に協力しなくなる。それがさらに環境を悪化させる。 凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになる。 よって、治安を回復させるには、
・一見無害であったり、軽微な秩序違反行為でも取り締まる。 ・警察官による徒歩パトロールを強化する。 ・地域社会は警察官に協力し、秩序の維持に努力する。
などを行えばよい。
「割れ窓理論」は1990年代にニューヨークでジュリアーニ市長のもとで実践された。 僕は、「割れ窓理論」によるニューヨークの治安回復キャンペーンの時期に、ニューヨークを拠点に仕事をしていた。 僕がはじめてニューヨークに訪れた際、信号は無視して、赤信号でも歩行者は道路は突っ切るものであった。 でも、ほんの2年程度の間に、信号無視をする人は激減していった。 たかだか、歩行者の信号無視をきちんと取り締まるだけで、ニューヨークの治安が回復していった。 僕は「割れ窓理論」の効果をリアルタイムに実感していた。
僕は、「割れ窓理論」の逆の現象が中国では、起きていたのではないか、と思った。 加えて、コンサルタントとしては、「割れ窓理論」で定性的に反日暴動を説明してしまってはつまらない。 「割れ窓理論」は正しいと思うけれど、それをモデリングしたい。 定量化して、数学的にモデリングしなくてはならない。 無理やりにでも定量化し、シミュレーション可能なモデリングを行ないたい。
「閾値」で考えてみる。 まずは、ロジックの説明。 善良なる反日デモ参加者が、暴徒化する閾値をモデリングしたい。
わかりやすくするために、反日デモの参加者が100人だったと仮定する。 デモに参加している中国人が暴徒化する閾値を0〜99と設定。 自分以外に暴徒化している人間が何人いれば、つられて暴徒化するかが閾値である。 「赤信号、みんなで渡れば恐くない」。 「他の人もやってるから自分もやっちゃっても大丈夫だろう」、の閾値。 閾値1のデモ参加者は、暴徒化する人間が1人いれば、つられて暴徒化する。 閾値2のデモ参加者は、暴徒化する人間が2人いれば、つられて暴徒化する。 閾値50のデモ参加者は、暴徒化する人間が50人いれば、つられて暴徒化する。 何人が暴徒化したら、自分も暴徒化するか、というモデルである。
100人のデモ参加者が暴徒化する閾値が0〜99ときれいに分散していたとする。 最初に、閾値0のはじめから暴徒化するつもりの中国人が存在したとする。 閾値0のデモ参加者は、閾値が0なので、いきなり暴徒化して石を投げる。 すると、閾値1のデモ参加者は、1人が石を投げたので、よ〜し、パパがんばっちゃうぞ、とつられて石を投げる。 2人が石を投げると、閾値2のデモ参加者も閾値を超えたので、つられて石を投げる。 3人が石を投げると、続いて閾値3のデモ参加者も暴徒化。 そして、次は閾値4のデモ参加者も暴徒化。 と、いうようにして結果的に100人全員が暴徒化する。 これが、暴徒化理論の基本である。
中国の反日デモ参加者の閾値はバラバラだっただろう。 閾値5の人間が10人と、閾値10の人間が20人、閾値30の人間が30人いたとする。 閾値5の人間は、5人が暴徒化すると、つられて暴徒化する。 中国の反日デモ参加者のなかに過激な5人グループがいたとする。 5人は「石を投げちゃえ」とグループ内で同意する。 5人で一緒に石を投げるのであれば、投げちゃえ。 閾値5の5人が、一緒になって日本大使館に向かって石を投げる。 だが、そこには仲間ではない閾値5の人間も5人いる。 5人が石を投げた時点で閾値5の5人もつられて石を投げる。 最初に石を投げた5人に加えて、石を投げた人間は、10人。 この時点で、閾値10の人間20人がつられて石を投げる。 石を投げた人間は、これで30人。 そこには、閾値30の人間が30人いるので、更に30人が暴徒化し、暴徒化したデモ参加者は合計60人。
と、こんな感じで中国の反日デモは、ただのデモから暴徒化していったのではなかろうか、と。 反日デモの参加者は、デモに参加した時点では、それほど反日感情は持っていなかったのかもしれない。 閾値30くらい。 それでも、暴徒化理論によると、反日感情の閾値が30であったとしても、人は暴徒化する。
模倣者と言っても良いかもしれない。 最初は小さな火種であっても、人は同じ方向に向かってしまう。 デモ参加者がノンポリで、閾値が高いったとしても、暴徒化理論により、暴動は広がる。
暴徒化理論は、人単位ではなく、都市単位でも考える事ができる。 北京で暴徒化したから、次は上海、そして香港。 そのまま拡大していけば、中国全土に広がる。 面的広がりに加えて、暴動のレベルも上がっていく。 あのまま放置すれば、戦争にもなりかねない。 もともとは、閾値の高い集団内で起きた暴動であっても、放置すれば巨大化する。
中国政府は反日教育により、閾値を下げてきた。 そして、デモが起き、暴徒化した。 だが、暴徒化は暴徒化理論により、予想を超えて拡大化していった。 中国政府は、反日暴動によって盛り上がった暴徒のエネルギーが中国共産党政府に向かう事を恐れた。 取り締まり強化によって、閾値を上げる行動を取った。
暴動や戦争が起きる過程は、モデリングしてシミュレーションできないこともない。 僕は嫌なコンサルタントなので、中国の反日デモのニュースをテレビで見つつ、愚かなる大衆は数学的にモデリングできるなあ、と思うのであった。 この暴徒化理論は、コンサルティングの実務では、強引に流行を作り出したり、市場を動かしたり、というような場面で適用可能ではないか、と思う。 マーケットの閾値の状況を分析し、それに応じたマーケティング施策を打っていく。 閾値の把握とコントロール、全体の動きのシミュレーションができれば、市場をコントロールできるはずだ。 応用範囲は多い。 そんなこと言ってるコンサルタントはいないけど。
■割れ窓理論 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%B2%E3%82%8C%E7%AA%93%E7%90%86%E8%AB%96
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