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2003年06月19日(木) 譲れない一線

 コンサルタントをしていると、いわゆる「ゴースト」の仕事が多い。
他人名義で世に出て行く、本や雑誌記事やプレゼンテーションパッケージやら。
僕らは黒子なので、実質的な著作者なのだけれど、自分の名前は世には一切出ないまま、自分の著作物が他人名義で出て行く。
僕の名前はどこにも出ない。
僕が実際の著作者であっても。

 まあ、これは仕事だ。
少なくとも僕は原稿料や著作権料以上の金銭的な報酬を得ている。
現実に本を書こうと記事を書こうと、原稿料や著作権料など大したものではない。
少なくとも僕は原稿料や著作権料以上のお金を取って著作物を生み出す。

 僕が著作に費やしたフィーから考えると、微々たる原稿料や著作権料では絶対にモトは取れない。
僕ら戦略コンサルタントの時間あたりのコストは弁護士よりもずっと高い。
原稿料や著作権料などゴミである。

 なので、金銭的な問題などどうでも良い。

 だけど、僕のプライドはどこへ行った?

 自分が書いたもの、自分が作ったものが他人の著作物として、世で賞賛されるのだ。
そこには僕の名前はどこにもない。
僕が自分をギリギリまで追い込み、ボロボロになって作ったものが他人名義で世に出て行く。
「著者」は著作物の本質的な意味もロクに理解しないまま、雑誌のインタビューや記者会見で答えるのだ。
真意も理解せぬまま。

 僕には耐えられない。
僕はゴーストの仕事を何年も続けている。
コンサルタント以前の前の会社にいるときからずっと。
一体、僕の書いた原稿が何本、他人名義で印刷物になったのだろう。
少なくとも僕はこれまでに数十本の原稿を他人名義で書いている。
そして、著作物を読んでもいない「偉い人」が賞賛されるのをずっと横で見てきた。

 僕は、もうゴーストの仕事は断ろうと思っている。
金銭の問題じゃない。
プライドの問題だ。

 僕の立場がどうなろうと、知ったことではない。
僕は自分の知的所有権は自分で守る。
僕は自分のコピーライトは主張する。

 はっきり言う。

 僕はもうゴーストの仕事はしない。

 世の中に出ている著作物の多くは、本人が書いているものではない。
少なくともコンサルティグファームの「有名コンサルタント」が書いたことになっている著作物は有名コンサルタントは実際には書いていない。
自分の著作物でありながら、「有名コンサルタント」は原稿を読んですらいないことも多い。

 有名コンサルタントなどは、作られた存在なのだ。
コンサルティングファームのマーケティングのための、偶像に過ぎない。
一方的なプレゼンテーションであれば、うまく繕える。
だけど、質疑応答や記者会見には耐えられない。
実際には脳をほとんど使っていないからだ。
雑誌の記者はインタビューで「有名コンサルタント」にガンガン突っ込めば良い。
すぐに馬脚をあらわすだろう。
「有名コンサルタント」は何も理解していない。

例えば、「これ」を見ればわかる。
正直言って、ネットバブル以前の数年前にタイムスリップした気分になる。
しょせん、有名コンサルタントなど、この程度。
現役のコンサルタントからすれば、こんな事を言って恥をさらして欲しくない。
僕らはここまでアホではない。

 僕はそろそろ自分のプライドを取り戻す時期に来ている。
その結果がどういう事になろうとも。




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