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2002年12月24日(火) サンタクロースのサプライチェーン

小さな頃、僕は父親に尋ねた。
「サンタクロースはクリスマスイブの夜にたった一晩で世界中の子供にプレゼントを配らなくちゃならない。一体、サンタクロースは何人いるの?」
父親は答えた。
「フィンランドにあるサンタ村というところの村人がサンタクロースの正体だ。そこの村人がサンタクロースとして世界中の子供達にプレゼントを配って回っている」
ふむふむ。
僕は納得した。

昔のサンタクロースはフィンランドから世界中にプレゼントを配って回っていたらしいが今は違う。
サンタクロースのコアケイパビリティーは子供達のクリスマスプレゼントに対するニーズを正確に把握し、きちんと期日どおりに届ける事。
今やフィンランドのサンタ村にあるのはデータセンターだけだ。
おもちゃの手配はトイザらス、配送はFedExと佐川急便にアウトソースされている。
システムの運用はIBMが請け負っている。
SAPをコアとしたERPシステムとシーベルのCRMシステムも導入済み。
トナカイは割増退職金を払ってリストラした。

12月のサンタクロースは地獄だ。
なにせクリスマスイブの夜、たった一晩のうちに世界中の子供達にプレゼントを確実に届けなくてはならない。
サンタクロースは品川にあるデジタルピッキングの自動化倉庫でベルトコンベアから次から次へと流れてくるプレゼントの山の仕分けに汗を流している。
「オラオラ、そんなペースじゃクリスマスに間に合わねーぞ!」
サンタクロースは腰が痛くなりながらも、プレゼントを発送地域別に振り分ける。
「サンタクロースの代わりなんていくらでもいるんだからな、オラオラ歩くんじゃねー!常に駆け足だっ!」
サンタクロースは年齢、性別、学歴、経歴一切不問で年収1,000万円が保証されている。

クリスマスプレゼントは単に時間どおりに届けばいいというものではない。
最近の子供達が一番欲しがるのはゲームソフト。
だが、ゲームソフトであれば何でもいい、というワケではない。
子供が持っているゲームのハードウエアを間違ってはいけない。
きちんと子供の保有するゲーム機を把握し、過去の購買履歴から子供の好きなゲームの種類を見極める必要がある。
プレステを持っている子供に任天堂でしか動かないマリオやポケモンを届けてしまってはマズい。
既にクリアしてしまっているゲームを届けてもしかたがない。
子供が保有しているゲーム機のデータ、保有ソフトのリストが必要である。
また、世界中で子供達の間で流行しているゲームをきちんと把握していないと「サンタのクソゲー」と呼ばれてしまう。
それにいくらサンタクロースがフィンランドからやってくるといっても、フィンランド語のポケモンが届いてはマズイ。
フィンランド製でも構わないのはLinuxのカーネルだけだ。
日本向けのソフトが手に入らないのであれば、リージョンコードを破るためのMODチップも一緒に届けるくらいの心遣いが必要。

クリスマスが近づくと子供達はパソコンから離れなくなる。
「ママー、サンタさんからのプレゼントのステイタスが"発送済"になったよ」
「今は"通関中"だって」
「まだ23日なのにもう近くの営業所まで来てるよ。あっ、そうか。24日夜の期日/時間指定なんだ」

サンタクロースはオートロックのマンションが苦手。
クリスマスイブの夜にサンタクロースがやってきたら、インターフォン越しに「ウチは宗教は間に合ってますから」などとあしらってはいけない。




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