斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2002年12月09日(月) |
ユナイテッド航空破綻の根本原因はガバナンスの矛盾 |
ユナイテッド航空が破綻した。 まあ、よくここまで持ちこたえたなあ、というのが正直な感想。
僕はかつてユナイテッド航空のヘビーユーザーだった。 年間10万マイル近く利用していた。 ニューヨークと東京にオフィスを持ち、2年間に渡って両方のチームを同時に運営していた頃のことだ。 ピーク時は東京、ニューヨーク間を月に3往復。 2、3日の間隔しか空いていないこともあった。
パスポートには麻薬の運び屋並に日付の間隔の空いていないスタンプが大量に押されていた。 肩まで髪を伸ばし、ヒゲ面でスーツケースの中は怪しい機材が満載。 当時の僕はどうみても怪しい人だったので、空港では厳しい荷物チェックを受けた。 ノートパソコンの中に変なものを入れていないかチェックするために起動させられたり、スーツケースが二重底になっていないか、中味を全て出された上でチェックされたり。
当時はエコノミークラスのディスカウントチケットしか買えなかったので、ワザとギリギリにチェックインしてみたり、何としても喫煙席を確保しろ、とゴネてみたりして強引にビジネスクラスにアップグレードしていた。 当然だが、マイレージも使わなければ、アップグレード料金も払わない。 ヘビーユーザーの証であるシルバーのマイレージカード(他の航空会社も使っていたのでゴールドはギリギリ取れなかった)をちらつかせながら、カウンターでゴネていた。 最近では正規料金でビジネスクラスを利用できるようになったけれど。 ユナイテッド航空さん、イジめてごめんなさい。
その他、遅延振替で10人しか乗っていない飛行機でニューヨークまで飛んでみたり、サンフランシスコ直行便のチケットを無理やりハワイ経由にさせてみたり、疲れているからといって一人で一列占拠してベッドにしてみたり、燃料が途中で足りなくなり成田までたどり着けずに千歳空港に降ろされたり、自分が乗る予定だった飛行機が墜落して乗る飛行機がなくなり空港で一晩過ごしたり。 ユナイテッド航空に関する思い出は尽きない。
ユナイテッド航空の破綻の原因として、従業員組合が筆頭株主であるため、抜本的なリストラができなかった事が挙げられている。 今回の破綻で初めて知った事だけど、ユナイテッド航空の筆頭株主は従業員組合。 従業員組合が発行済株式の55%を保有している。
これは面白い事例である。 「会社は誰のものか?」という基本的な質問に対して、ユナイテッド航空の場合は「従業員のもの」という答えになるのだ。 従業員組合が筆頭株主かつ55%の株式を保有しているので、議決権は基本的に従業員の代表機関である従業員組合にある。 業績が悪化し、リストラが不可避になったとき、ジレンマに陥った事は想像に難くない。 自分で自分をリストラしなきゃいけないんだから。 モメるのは当然である。 従業員の権利を守る事が目的の従業員組合が大胆なリストラを断行することなど、できるハズがない。 一方で、リストラをしなければ会社が破綻し、全員が路頭に迷う。 低視聴率番組「サバイバー」の追放審議会みたいだ。 結果的にユナイテッド航空は自分で自分をリストラすることができず、破綻した。
当たり前である。 従業員組合が筆頭株主である時点で企業のガバナンスは崩壊しているのだ。 これでは共産主義国家と同じではないか。 「収益を生む」という企業本来の目的と「従業員を守る」というふたつの目的は必ずしも両立し得ない。 このふたつが同時に達成可能なのは企業が右肩上がりの時だけである。 企業業績が良ければ問題は表面化しないが、業績が下がり始めた途端、矛盾点が露呈する。 コーポレートガバナンスの根本的なところがそもそもおかしい。 ユナイテッド航空の破綻の理由は、共産主義国家が一斉に崩壊していったのと理屈は同じ。 確かに911のテロがユナイテッド航空破綻の引き金になったことは間違いないのだけれど、根本的な原因はガバナンスの矛盾にあったと思う。
ユナイテッド航空は破綻後も運航は続けるとの事だけど、またフライト中に赤いきつねを食べる機会はあるのかな。 飛行機のなかで食べるカップウドンはなぜかうまいからな。
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