斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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9月期中間決算の数字がほぼ出揃った。 いくつかの企業は「V字」回復を達成した模様である。 ああ、これで安心。 日本経済も緩やかでまだら模様ながらも、ところどころに明るいきざしが・・・。
甘いっ! 本当の意味でV字回復を達成した企業なんて限りなくゼロなのである。
せいぜい「L字」。 良くても「し字」。 ひどけりゃ「く字」。 業績がストンと落ちる「I字」。 倒産してしまって「・」になってしまう「!字」。
V字回復のカラクリは単に「前年度にリストラ費用を前倒しして計上していただけ」、という点である。 前年度にリストラ費用を積み増し、極端に悪い数字を計上。 今年度は業績が回復したわけではないが、前年度にリストラ費用を積み増して最悪の数字を計上した結果、一見、V字回復を達成したように見えるだけなのである。
それに加えてリストラにより、一時的に余計なコストが減っただけ。 企業の本来の収益性が向上しているわけではない。
V字回復を達成した企業の株価って別に上がってないでしょ? 本当のV字回復だったら、とんでもなくすごいことなので株価は上昇しなければおかしい。 数ヶ月前から株価が上昇に転じ、V字回復は既に株価に織り込み、というわけでもない。 以前から株価は変化なし、もしくは順調に景気良く下落中。 マーケットは正直だなあ。
V字回復は基本的にインチキなのである。
前年度にリストラ費用を積み増し、わざわざ悪い数字を演出したにもかかわらず、V字回復を達成できず、更にリストラ費用を積み増し、とか言ってる企業の実態は予想以上にひどい。
企業の実態は全然良くなってはいない。 「減収、増益」ってやつだ。 そもそもの売上が伸びていない。 表向きは「単に売上高を大きくすることではなく、収益性を向上させ、筋肉質な利益創出体質への転換を計った」というところであろう。
営業利益は伸びているように見えるが、リストラによる一時的なコスト削減によるものである。 正しいリストラとは「収益を増大させること」「コストを削減すること」の両方が必要。 収益の増大とコストの削減により、結果として「キャッシュをいかに生み出す構造に変革するか」が本来の姿。
現状のリストラでは「収益の増大」効果は全くと言って見られない。 せいぜい、工場やバックオフィスの人間を無理やり営業部門へ配置転換することくらい。 「マーケットの冷え込み」がどうのこうのとからしいが、そもそもの売上を増大させるようなアクションは見られない。 切り捨てばかりでは収益増大効果があるワケがない。
日本企業のリストラは「コスト削減」が中心である。 コスト削減もコスト構造を変革するようなものではなく、単にコストに見合わないものを切り捨てているだけ。 赤字事業の切り捨て、撤退。 工場の閉鎖、売却。 そして、給与と実際の働きが見合わない「逆ザヤ中高年社員」の切り捨て。 コスト構造を改革したわけではなく、患部を切り捨てていっただけ。 悪いところは切除したものの、病気そのものが治ったわけではないのだ。 ダメなものは、まず最初に捨てる、というアプローチはそれはそれで正しいのだけれど、後が続かない。
構造を改革しているわけではないので、根本的には何の解決にもなってはいない。 対処療法でしかないので、効果は短期的なもの。 リストラとは企業を「キャッシュをいかに生み出す構造に変革するか」であって、社員を路頭に迷わせることではない。 日本企業のリストラ=構造改革はまだまだこれから。
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