斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2002年11月08日(金) |
FOMAは本当にダメなのか? |
NTTドコモが2002年度末時点のFOMAの契約数予想を130万から32万へと大幅に下方修正した。 やっと認めたか、といったところである。 もともとの目標値がただでさえ低かったのに、それを4分の1以下に下方修正。
NTTドコモの3Gはダメなのか? FOMAは普及しないのか? auの時代がやってくるのか?
僕の見解では「否」である。 最終的にはNTTドコモのFOMAが勝つと思っている。
携帯電話の現行の2G(PDC)から3G(FOMA/W-CDMA,CDMA2000)への移行は携帯電話会社にとっては単に迷惑なだけなのである。 携帯電話会社、特に現在の勝ち組みであるNTTドコモとしては積極的に携帯電話の世代交代を進める理由など何もないのだ。 世代交代の時にはシェアの大きな変動が起きることが多い。 NTTドコモとしては3Gへの移行など迷惑極まりないはずである。
2Gから3Gへの移行はお役所が決めた事。 携帯電話が急激に普及してしまい、帯域幅が逼迫してしまった電波の利用効率を上げることが第一の目的。 そのために導入された技術が3G(FOMA/W-CDMA)。 2G(PDC)が開発された時期よりも今のほうが技術は当然進化しているので、副次的に高速通信が可能になったり、音のクオリティーが良くなっていた、というだけの話なのだ。 デジタルTVへの移行ともともとの理由は同じ。
TV電話だとか動画だとか高速データ通信とかは携帯電話会社にとってはあくまでも副次的なもの。 帯域が一杯なので皆さん早く移行してください、というだけのこと。 「携帯電話で動画なんて見ない」とか「TV電話なんて使わない」とか言われても困るのだ。 技術が勝手に進化して通信速度が上がっちゃっただけなんだもの。 後付けでなんとか利用方法を考えないといけなくなっているだけのこと。
NTTドコモとしてはユーザーが早期にFOMAに移行してくれなくても一向に構わない。 インフラがきちんと完備されて通話エリアが広がり、待受け時間も伸び、端末も軽くなり、FOMAが現行のPDCと同じかそれ以上の実用性を持ち始めてから移行してくれれば良いのだ。 FOMAが現行のPDC以上の実用性を持ったとき、ユーザーはFOMAだとか3Gであるとかを意識しないで自然に移行するだろう。 機種変更のときに新機種がたまたまFOMAだった、というカタチでの移行。
NTTドコモはFOMAが実用性を持ちうるまで、現行のPDC端末の504iや251iシリーズで時間稼ぎをすれば良い。 auのCDMA2000にシェアを取られなければ良いのだ。 auの3Gを買っても、3Gそのものの良さは全く関係ない。 動画や高速通信なんてほとんど意味ないでしょ。 3G特有の機能を目的にauを選択している人なんてほとんどいないと思う。 高速データ通信をしたけりゃ普通はAirH"128Kを使うでしょ。 auのCDMA2000の利用者は単に機種変更をしたら、その機種がたまたまCDMA2000だった、ってだけの事。
NTTドコモとしてはauが3Gの良さをアピールして、ドコモユーザーがauに移行してしまうことが一番怖い。 できればユーザーに3Gを意識して欲しくないのだ。
FOMAが使いモノになるまで504iや251iシリーズで満足していて欲しい。 ただ一方で、504iや251iシリーズの端末がauやJ-Phone(ボーダフォン)に比べて競争力を失ってしまっているのは事実。 いつの間にやらauやボーダフォンのほうがずっといい端末が揃っている。
GPSに関してはauはCDMAインフラと連動して動くクアルコムのGPSチップを搭載している。 CDMA2000/Oneそのものがクアルコムの技術であるため、NTTドコモは真似できない。 来年あたりにNTTドコモもGPS携帯を出してくるだろうけれど、性能的には現行のauのGPSケータイほうが優れているはずである。
NTTドコモには慢心があったことは否めない。 圧倒的なシェアにあぐらをかき、努力を怠り、ユーザーをバカにした態度を取っている事は反省すべきだ。 端末メーカーやコンテンツプロバイダに対する態度も同様だ。
ただし今後、ドコモはシェアを武器に端末メーカーに対して無理難題を押し付けて最強端末を出してくることだろう。 端末メーカーはNTTドコモが気に入らなくても、一番大きなお客さんだから、最優先せざるを得ない。 コンテンツプロバイダも同じ。
NTTドコモはNTTグループの既得権益や規制のおかげでシェアを獲得したにもかかわらず、努力や卓越した経営力、技術により高収益や高シェアを上げた、と勘違いしている。 もともとはNTTのインフラを利用して全国どこでもでつながるって事が優位性だったんだから。 その後の成長を牽引したと言われるi-modeはHDMLではなくC-HTMLを採用したこと、コンテンツプロバイダが収益を確保できるインフラを用意したことは素晴らしいことだと思うが、ただそれだけである。
i-modeの仕様は普通に考えれば誰でもそういう結論に達する程度のものである。 恥ずかしい本を書いて自慢するようなことではない。 他の携帯電話会社が同じ事をできなかったのは、単に体力の問題である。 世界標準からはずれるC-HTMLをあえて採用するほどのシェアも、コンテンツ課金のしくみを独占するほどの影響力も持ち合わせていなかっただけだ。 NTTドコモの戦略の勝利ではない。
でも結果的に2005-6年ころにはNTTドコモのFOMAは圧倒的に伸びていく事になってしまうのだ。 だって、2Gから3Gへの移行は単なる機種変更だもん。
FOMAが使い物になるまで、NTTドコモは気合いの入ってないFOMA端末でお茶を濁しつづけるだろう。 一方で504iや251iシリーズは充実させ、auへのユーザーの移行を止めようとするだろう。 FOMAの低調ぶりに対するマスメディアの見方はちょっと間違っている。
とは、言いつつもNTTドコモが僕と同じ考えをしているかどうかは良く知らない。 単にFOMAの普及が遅れて、あせってるだけだったりして。
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