セピア色の思ひ出

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2003年08月14日(木) ** モトカレ **

私はジョーが大好きだった。

でも

自分の利益のためだけに 

他人に不利益を与える嘘をつく人だった。

(実にうまかった。嘘のつき方が。表情には絶対でない。)



それだけは絶対許せなかった。



彼をスキだという想いと 許せない部分が常に葛藤していた。

でもスキという気持ちにいつも負けて

ここまで来たのだ。



私の前で、家族や友人に嘘をつくことを散々見てきた。

自分が不利な状況に追い込まれると

とっさに嘘をつく。

それはもうすでに彼の遺伝子に組み込まれているようで

どうしても直せないのであろう。

というか 直す気もない。

彼はそうやって うまく世の中を渡ってきたのだ。



彼が高三の頃の文化祭。

夏だった。

夜。

部活のみんなで川の土手で飲み会をしていたのだそうだ。

すると、巡回中の警官に見つかってしまった。

部員達は皆逃げたが、

酔って歩けないほどになっていた一年生が

捕獲され、学校で問題になった。

翌日、陸上部員は一人ずつ教師のもとに呼び出され、尋問。

ジョーも呼ばれた。

しかし

他の部員達は皆正直に容疑を認めたのに対して

ジョーだけは

「自分はその場にいませんでした」

と。

彼は最後までその主張を続け、疑いを持っていた教師も

あまりに強い主張に結局はおれ、彼だけは無罪放免。

他の部員達は 自宅謹慎になった。

その後彼は部活仲間と疎遠になったことはいうまでもない。

しかしその疎遠もすぐに回復したようだ。

彼の学校は地元では一番の進学校。

受験を控えた三年生のために、飲酒事件はもみ消され

内申には響かなかった。



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私にたいしても、きっと嘘をついていることがあるのだろうな、

と、三年間思っていた。

(小さいうそは今まで何回もつかれてきたけれども…)

でも それはあえて追求しなかったし

もしかしたら 自分に対してはそんなことはないかもしれない…

という、過信もあったのも事実。



しかし、その過信も覆された。

それが 先日の花火大会の夜だった。

花火大会に集まった私の仲間から

私と別れるだいぶ前からの

彼が周りに話していた、私への本当の気持ちを

聞いた。

信じられなかった。

私にはずっといい顔して。

他者には ひどいことばかり言っていたのだ。

なぜ、直接言わないのか。



別れる前の数ヶ月間。

彼はすでに好きでもないのに 私と付き合って。

私は好きでいてくれているのだと信じて。



そして 自棄酒へとなった。

花火なんて、最初の五発くらいしか覚えてない。

許せなかった。人間として。



私にはずっとスキだと言いつづけ 作り笑いを浮かべ。

回りには 面倒くさいだとか 付き合っていくのは難しいだとか。

私自身に言えば済むことなのに。

周りに言って何が変わるというの?

その嘘は あなたに何の利益をもたらした?



彼が別れる間際に言ったせりふ。

「俺は嘘つきで シホさんはバカ正直だった。

それでいいじゃない」



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