そうると一緒に暮らし始めて。幸せなことだらけやった。 ただ好きな人のそばにいられることが。こんなにも自分を満たすこと。 あたしは今まで。ほんまの意味では知らんかったんかもしれんと思った。
「ただいま」も「おかえり」も。 「いってきます」も「いってらっしゃい」も。 「おはよう」も「おやすみ」も。 やばいくらいくすぐったくて。にやけまくってた。
同じ食器を使うこと。 色違いの歯ブラシを並べること。 洗濯物が一緒に風にそよぐこと。 そーゆう小さなことが。ひとつひとつ心に沁みた。
そうるが好きなんやと思った。大切なんやと思った。 毎日毎日。抱えきれんほどの愛を思い知ってた。
雑誌会の日。久しぶりに早く終わったからって。 たまには外でごはん食べよっかーって誘ってくれた。 「最近ちょっと胃が荒れてるんよなぁ。」とか言って。 軽くうどんをすすっただけやったけど。あたしには十分やった。 胃が荒れてるとか言うくせに。店に入ったらてんぷらまで注文して。 「なんか食べたくなってんもん。」って笑うそうるがかわいかった。
バレンタインは。帰宅こそ深夜やったけど。 なんとびっくり。ちゃんとチョコを持って帰ってくれた。 「すっかり忘れててん。こんなんでごめんや。」とか言って。 くれたのはコンビニで買ったやつやったけど。本気で嬉しかった。 あたしの用意してた生チョコと自分のを食べ比べて。 「あーやっぱコンビニの味やなー。」って笑うそうるが愛しかった。
幸せなんていっぱいある。たぶんどこにでも落ちてる。 それを見つけるチカラが。自分にあるかどうかなんやと思う。 大丈夫。あたしはあたしの幸せを見失ったりはせーへん。
そう思うけど。今日はちょっとだけ辛い日。
2月17日。あたしはまた痛みを思い出す。 胸の奥にある小さな傷が。ちょっと疼くのを感じる。 最悪やと思う。しつこいと思う。情けないと思う。 もういい加減にしろよって話やとも思う。 でもあたしは。どうしても忘れられへん。
あの日感じた痛み。押しつぶされそうな痛み。 そうるの照れた声。あたしの無理した笑顔。 失うのがこんなに辛いなら。好きにならんかったらよかった。 なんでこんなに苦しいのに。嫌いになれへんのやろう。 そう思って。ひとりで声を殺して泣いたあの日。
こんな痛い日が。あたしにはいくつかある。 そして悲しいことに。そーゆう痛みほど忘れられんかったりする。 あたしとそうるには。幸せなことの方が多いはずやのに。 幸せを見つけるのが得意なあたしやから。間違いなくそうやのに。 痛みの方が記憶に残るってのは。どうしてなんやろう。
ねぇそうる。あんたにはもう何も言わんけど。 あたしは今朝。ふと思い出してもた。 「もー眠いわー。あと4日で提出とか無理やー。」って。 いつもみたいに文句言いながら。出て行くあんたの背中を見て。 やわらかい幸せと同時に。苦い痛みを覚えた。
幸せ探しが得意なあたしやけど。 それにどっぷり浸りきることはできんくて。 いつだって10%ぐらいは不安がある。 それはきっと。喪失と言う名の恐怖。 いつかの痛みが。あたしに深く刻み込まれてる証。
あたしだけじゃない。愛し合う2人になら必ずあるもの。 相手が愛しいから。失いたくないと思うのは当然のこと。 そう思う反面。なんで未だにこんなに痛いんやと思ってまう。 世間の恋人はみんな。こんなに苦しいもんやろうかと思ってまう。 あたしって。ちょっとおかしいかもしれんと思ってまう。
ねぇそうる。あんたは知ってるかな。 目の前で笑うあんたを見ながら。泣きたいぐらい切なくなるあたしを。 もう疑ってるわけじゃないし。乗り越えたはずやのに。 いつかあんたが消えそうな予感を。未だに拭いされんあたしを。
そうる。あんたはちょっとぐらい知ってるんかな。 ↑どうなんやろう。あたしはやっぱりしつこいんかな。 |