昨日の夜。ふと目が覚めた。 携帯を見たら3時半で。外はまだ真っ暗やった。 そうるを起こさないようにベッドを出て。キッチンに向かった。
冷蔵庫を開けて。ミネラルウォーターを飲んで。 すぐまた寝ようかと思ったけど。あんまり眠くなくて。 しょーがないから眠くなるまで起きてようと思った。 上着を羽織って。ベッドにもたれて座って。ぼんやりしてた。
暗闇の中で。時計の針の音だけが聞こえて。 ちょっと心細くなって。振り返るとそうるの寝顔があって。 せっかくやから。久しぶりに見つめてみるかーとか思った。 でも静かなその寝顔を見てたら。楽しむつもりが苦しくなった。
愛しいなぁ。大切やなぁ。幸せやなぁ。 そんなことを思ううちに。どんどん苦しくなった。 そうるとあたしは。いつまで一緒にいられるんやろう。 もしそうるがあたしの前からおらんくなったら。 あたしはいったいどうなるんやろう。
失いたくないなぁ。手放したくないなぁ。 そう思ったら。涙がじんわり溢れてきた。 もしもそうると一緒におれんくなったら。 ある日突然そうるがあたしの前から消えたら。 そんなことを考えてもて。いきなり怖くなった。 眠ってるそうるを揺り起こして。抱き締めたくなった。
そうるはここにおるのに。なんでこんなに怖いんやろう。 考えるうちに。あたしはひとつのことを思い出した。
それは去年の夏。突然やってきた友達の死やった。
彼女は。高校時代の友達やった。 クラスも部活も別やったけど。共通の友達を介して仲良くなった。 一緒に自転車で帰ったり。カラオケでバカ騒ぎしたり。 くだらんことで笑い合える大切な友達やった。
高校を卒業してから。ずっと連絡をとってなかった。 どうしてるんやろうと思い出すこともなかった。 悲しいかな。あたしの毎日は忙しくて充実してて。 彼女のことは完全に記憶の彼方に追いやられてた。
彼女の死は。友達からのメールで突然告げられた。 車と自転車の交通事故で。彼女は完全な被害者やったこと。 意識不明の重体が数日続いた後で。帰らぬ人となったこと。 そんな事実のみが淡々と綴られたメールやった。 たぶん送ってくれた友達も。まだうまく受け止められてへんかったんやろう。
あたしはびっくりしすぎて。声も涙も出んかった。 その場にもえかが一緒にいたけど。2人して呆然としてた。 彼女とは何年も会ってなかったから。全然実感が持てんかった。
ただ同年代の友達が事故で死んだという事実で。 「死」というものを。初めて身近に感じた。 普通に年をとって。眠るように死を迎えるのが当然と思ってたけど。 生き続けていけることは。当たり前じゃないんやって思った。
どこかで何かが間違えば。あたしも消えるかもしれん。 あたしだけじゃなくて。あたしの大切な人たちも消えるかもしれん。 そう思ったとき。あたしの頭に真っ先に浮かんだのはそうるやった。 バイクで事故って。真っ赤な血に塗れるそうるが。脳裏をよぎった。
途端に怖くなって。全身が震えた。背筋が寒くなった。 ありえへん。そうるがおらんくなるとか。ありえへん。 そうるを失ったら。あたしは本気でどうにかなってしまう。 どうしよう。どうしよう。そんなこと絶対にあったらあかん。 あかんことやけど。可能性はあることなんや。 ぐるぐる考えるうちに。気分が悪くなって倒れそうになった。
友達の死を知って。その日のうちにそうるに会った。 話すうちに感情が高ぶって。あたしは泣いた。 「お願いやから死なんといて。」って。 「あんたが死んだら生きていけへん。」って。 安っぽいドラマみたいなセリフを。大真面目に吐いた。 どうしても言わずにはおれんかった。
そうるはあたしの話を。真剣に聞いてくれて。 泣き出したあたしを。ちょっと困ったように見つめて。 「じゃああんたも死なんといてな。」って。 「約束とかできるもんじゃないけど。約束な。」って。 やわらかい笑顔で。優しい声で。言ってくれた。
そうるは忘れたかもしれんけど。あたしは今でも覚えてる。
そんな夏のことを。ふと思い出しながら。 目の前で眠る愛しい人を見つめてた。 失いたくないなぁ。手放したくないなぁ。 そう思うと。やっぱりどうしても涙が溢れた。 眠るそうるを起こさんように。口元を押さえて泣いた。
あたしは確かに幸せやのに。そのせいで何かが怖い。 幸せを手に入れてしまったから。それを失うのが怖い。 そうるはここにおるのに。あたしのそばにおるのに。 なんでこんなに怖くなるんやろう。なんでこんなに涙が溢れるんやろう。
ねぇそうる。あんたを思うとね。 あたしはこんなにも簡単に泣けてくる。 静かに眠るあんたの横で。苦しくてたまらんくなって。 祈りにも似た思いで。あんたの名前を呼んでる。
ねぇそうる。なんでこんなに愛しいんやろう。 ねぇそうる。なんでこんなに悲しいんやろう。 なんでこんなに嬉しいのに。なんでこんなに苦しいんやろう。 あんたを好きになってから。あたしはいつだってこんな感じ。
自分でも説明のつかん思いが。あたしの中で渦巻いて。 容量を越えてまうから。後から後から涙になる。 ぽたりぽたり。落ちていく涙の雫。 1滴1滴に。あんたへの愛が詰まってる。 涙はいつか乾いて。跡形もなく消えるけど。 あたしの中では。変わらずにあんたへの思いが溢れる。
ねぇそうる。生きててくれてありがとう。 あたしと出会ってくれて。あたしを見つけてくれてありがとう。 でももうひとつだけお願い。お願いやから死なんといてね。 あんたと離れたくない。あんたを失いたくない。 わがままなあたしは。ついあんたにも多くを望みがちになるけど。 ほんまはあんたが生きててくれれば。もうそれだけでいい。
その先の幸せは。あたしが守っていくから。
*追加* この日記を書きながら。ある曲を思い出しました。 最近聞いて。やっぱり泣かされた曲です。 あたしの今回の状況とすごく似てて。 あぁこれはもう載せるしかないなーと(苦笑)。 優しいメロディーラインがたまらない曲。お勧めです。
あーしかし。槇原敬之。やっぱり好きやなぁ。
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真夜中に目が覚めた 月明かりは横向きの 君の寝顔を照らして
あまりにも青白くて 冷たそうに見えて 息もしてないように見えて
「もし君が死んだら」 あるわけもない事だと 今までは思いもしなかったのに
君を見ていたら涙が あふれて あふれて 止まらなくなる 馬鹿みたいだと 自分で笑いながら
それでもまだ涙が あふれて あふれて 止まらなくなる 頼むから一緒に 長生きしよう
長生きしよう / 槇原敬之 より一部抜粋
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