「あぁー!髪!髪!」
今日あたしがそうるに会った時に。最初に言った言葉。 なんて言葉足らず。まるで覚えたての子どもみたい(苦笑)。 そうるの変身っぷりに。ちゃんと言葉が出てこんかった。
そうるの髪は。めちゃめちゃ短くなってて。さらに真っ黒やった。
前から切りたい切りたいって。うわ言のように言ってたけど。 今の長さはうっとおしすぎるーって言ってたけど。 (それでもたいがい短かったんやけけどね。) まさか。こんなに思いっきり切ってくるとか! しかも。こんなにも恐ろしく似合ってるとか!
てゆーか黒髪!相当久しぶりの黒髪! どれぐらいぶりやろう。2年ぶりぐらいかなぁ。 もともとそうるの髪は。太めでしっかりストレート。 それが黒髪になると。かーなりかっちょいい。 重たい感じがするけど。これからの季節にはちょうどよさそう。 くっきりしたそうるの目鼻立ちには。ほんまに黒髪が似合う。
「うっわー。めちゃめちゃ感じ変わったなぁ。」あたしは感心して。 そうるの頭をやたらめったら触りまくってた。 最初はおとなしくあたしに触らせてくれてたそうるも。 「ちょっと。触りすぎ。」って呆れて。あたしの手を掴んで離させた。
出会った頃のそうるは。恐ろしいくらいに髪がキレイやった。 あたしは最初にそうるを見たとき。そのキレイな瞳に吸い込まれて。 次には。天使のキューティクルがある髪に見とれたんよね。 なんかそんなことを思い出して。あたしはにんまりしてた。
でもこの後で。ちょっと言い合いをして。 幸せ気分はどこへやら。あたしはまた簡単に沈んだ。
そうるが黒髪にしたのは。就職活動を始めるため。 その話はちょっと前から聞いてたけど。あたしには意外やった。 そうるは就職よりも。院に進むことを選ぶと思ってたから。 ハッキリ言ってそうるは頭もいいし。(成績表は「優」オンパレード。) 理系の頭でバリバリ研究とかやっていくと思ってたから。 でもそうるは。とりあえずは就活することに決めて。 ぼちぼちと説明会なんかに顔を出したりしてるみたい。
あたしはというと。正直全然将来のことが決められてない。 院に行くことはないと思うけど。病院就職するかどうかは迷ってる。 この不況の時代に。手に職をつけることは大事やって思うし。 それがいつか自分の助けになるかもしれんとも思うんやけど。 今の自分にとって。それが100%やりたい仕事って言い切れんから。 このまま看護師になってええもんやろうかって。迷ってる。
実際。仕事ってどこまで満足して決めたらええもんなんやろう。 お金もらって働く以上。どんな仕事に就いてもしんどいことはあると思うし。 キレイな面ばかりを見ていられるわけじゃないとも思うんやけど。 もっともっと自分にはやりたいことが見つかるような気がして。 なんとなく踏み切れんくなってる。意気地なし。
それならそれで。ちゃんといろいろ探して動いていけばいいのに。 あたしは。どうしようどうしようって悩むばっかりで。なかなか動けん。 そういうあたしを見てると。そうるも多少はイライラするみたいで。 結局。最後には言い合いになってもた。
「あたしだっていろいろ考えてるねん。」 「分かってるし。考えてへんなんか言ってへんやんか。」 「・・・だってそう言いたそうやねんもん。」 「なんでやねん。口だけで行動が伴ってへんって言ってんねん。」 「・・・・・・。」 「あんただいたい難しいこと考えすぎやねん。」 「・・・・・・。」 「それに現状に文句言ってるだけじゃ何も始まらんで。」 「・・・・・・。」
言い合いと言いつつも。最後の方はあたしは言われるばっかりで。 言い返す言葉なんか全然見つからんかった。 そうるの言ってることは間違ってへんかったから。
ねぇそうる。考えすぎて。どうしようって思うばっかりで。 問題と直面するのを後回しにして逃げるのは。あたしの悪いクセ。 それをあんたはやっぱり見抜いてる。そして指摘してくれる。
それはありがたいんやけど。ほんまに感謝してるけど。 当たってることをそのままキツく言われるのって。 自分で分かってたら。けっこうグサグサくるもんやんね。 例えばあたしが同じようにあんたに言っても。あんたは平気かもしれん。 でもあたしは。そんなふうに思いっきり言われたら。痛い。
でもでも。分かってるねん。あんたがあたしのためを思って言ってくれてること。 だから別にあたしは。あんたに文句を言いたいわけじゃない。 そりゃ言い方考えてくれたらって思うこともあるけど。それよりむしろ。 そういうので。簡単にへこむ自分にむかついてるだけ。 あんたの優しさをちゃんと分かってるのに。傷ついてる自分が情けないだけ。
あぁ。もっと。もっと強い人になりたい。 愛する人の忠告を素直に受け止められるような。 そしてそれを糧にして成長していけるような。 そんな強い人になりたい。
そしたらもっと。あんたの前でも胸を張れるような気がするから。
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