戯言。
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2005年07月07日(木) 044.シンデレラの靴[テニプリ/跡宍]
放課後の、音楽室。
部活に顔を出した後、授業の際忘れていった課題を取りに来たのだが、何故か跡部もついてきた。
樺地が部活で忙しいせいだろうか、最近は一緒に帰るのがほぼ日課となっていた。
自分が座っていた机の中から紙の束を取り出し当初の目的を果たした穴戸は、室内に置かれたグランドピアノに近づき、蓋を開ける。
「おい」
「ちょっとだけ」
まだ帰らないのか、と片眉を上げてこちらを見やる跡部をサラリと無視して鍵盤に指を置いた。
特に何の曲を弾くでもなく、鍵盤に指を乗せていく。
ふと思いついて、振り返った。
「なあ、跡部」
「あぁ?」
「お前、ピアノ弾けるんだったよな」
「....少しくらいはな」
自分がこれから何を言い出すのか察知したのか、嫌そうに顔を顰める。
とりあえずは見なかったことにして、口を開いた。
「何か」
「断る」
言い切る前に却下された。
「どうしても?」
「どうしても」
にらみ合う事暫し。
折れたのはやはり、跡部の方だった。
ったく、とため息をつきピアノに歩み寄る。
慌てて場所を譲った穴戸をチラリと見やり、椅子に腰を下ろした。
「1曲だけだぞ」
「おう」
「リクエストは?」
「....特に無え」
そんなことだろうと思った、と再度ため息をつき、鍵盤に手を乗せる。
「じゃあ、適当に弾くぞ」
跡部の指が音を奏でる。
緩く目を閉じる横顔、鍵盤の上を滑るように動く長い指。
窓から差し込む西日を受けるその姿は、まるで絵画の様だった。
そして耳から入ってくる優しい音楽に、穴戸は聴き入った。
最後の一音が鳴り終わると、ゆっくりと鍵盤から指を離した。
その仕草も流れるように美しい。
拍手をするのも忘れて、その一部始終を見つめていた。
「これで満足か?」
穴戸を見上げる跡部は、いつもより少し優しい顔つきで。
でも青い瞳は、何か物言いたげで、不思議と胸が高鳴る。
「あ、ああ。ところで今弾いたやつ、何て曲?」
胸の高鳴りを誤魔化す為に、話題を変えてみた。
「自分で調べろよ、メロディは覚えただろ?」
口の端を上げて笑うその顔は、もういつもの跡部だった。
「分かるかよ」
「ああ、誰かに聞くのは禁止だからな」
「はぁ?じゃあどうやって調べんだよ」
「んなの俺が知るか」
そう言い捨て、ピアノの蓋を閉じる。
そのままドアまで行き、帰るぞ、と促す。
跡部について行きながら、更に食い下がった。
「じゃあヒント!ヒントくれ」
「ヒント?」
少しばかり思案して、一言。
「Ich will Sie. 」
「はぁ?」
「じゃ、後は頑張れよ」
「ざけんな!何語だよそれ....」
その後はいくら食い下がっても何も教えてくれなかった。
後日ふとした事でその曲名を知り、大いに赤面する穴戸の隣には、あの日よりも優しい眼差しで彼を見つめる跡部の姿があったらしい。
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えーと........た、たぶん跡宍(予定)。
ものごっつ間接的に気持ちを伝えてみるヘタレな跡部さんと全く気付かないけど潜在意識の中で既に跡部に転んでる宍戸さんのお話。
跡部が弾いたのは、サティのあの有名なやつ。
ヒントは曲名をドイツ語にした(たぶん合ってると思うんだが...
素敵に流暢だった為、宍戸さん聞き取れず....跡部もそれ見越してた、と。
つーワケで曲名=シンデレラの靴。
穴戸王子はいつシンデレラ跡部の真意に気付けるのでしょうか!?
....みたいなー(笑
ここまで説明入ってやっとお題と結びつくダメ小噺~
つーかお題の更新いつ以来よ(爆
なんか最近本人たち(もしくはどっちか)に自覚症状無い跡宍が好きかも。
半ばコンビ話になりつつ....こんなんでいいのか俺。