デイドリーム ビリーバー
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2003年07月11日(金) 携帯事件その3 混乱 

友人夫婦が来て、簡単なあいさつのあと
「間違ってたよ」って、彼に携帯を渡しました。

うしろめたかったら、少しは慌てるだろうと思ったんだけど
彼は「あー、ごめんごめん」と、動じる様子もなく、受け取りました。

しかも、彼の友達の国では
カメラ付はおろか、携帯メールもまだ主流ではないそうで
珍しがる夫婦に、得意げに触らせたりしていました。

見られたらどうすんのって、私の方がハラハラしたほど。


思えば彼は、
寝ている時も、無防備に置きっぱなしだし
映画でも、席についてから
「始まるまで、トイレ行ってくる」って、簡単に私にあずけるし

私が見るわけないとでも思っているのか
バレたらバレたでいいと、開き直っているのか

彼の気持ちがさっぱりわからない。
私のことを大切にしてくれる、やさしくて素敵な人だと思っていたけど
実は、とんでもない極悪人なのかも。



だけど、この時、私は
だいぶ、落ち着きを取り戻していました。

十年ぶりの友人の前で、しかもその家族、特に子供たちの前で
変な態度はとれないと、思えるぐらいには。

余裕、というよりは、心の許容量オーバーで
ブレーカーが落ちた状態に近かったようにも思います。
不思議なことに、食事の間は、少しも思い出しませんでした。
すべて忘れて、笑っていました。

それに、彼の友人夫婦が、とてもいい人で。
初めて会ったのに、とてもうまがあって、それが少し不思議で、嬉しかった。

子供たちもかわいかった。
私達に合わせて、日本語で話そうとするんだけど、日本語は苦手で、
興奮すると、文章の途中から、だんだん英語になっていく。

その二人の子供が、私のことを、とても意識しているみたいで
興奮気味に、いろんなことを教えてくれるかと思ったら
急に恥ずかしがって、お母さんの後ろに隠れたり
かと思うと、また急に甘えてきたりで、
そんな風に、子供と遊んでいる私を、彼がにこにこと、楽しそうに見ていて

奥さんの方も、実は、20歳のころの彼をよく知っていて
男どもが株の話で盛り上がっている時に
こっそりと、昔の話をしてくれました。
それは、ちょっといい話で、
それを、わざわざ私に教えてくれる奥さんが、
私の背中を押してくれるようにも感じました。

多分、さっきのことがなかったら、私は本当に心の底から
幸せを感じられたと思います。

この時、楽しくて、ずっと笑っていたけど
そんな私を、どこか遠くから、もう一人の私が見ているような
奇妙な感じがしていました。



あっというまに食事会が終わり、二人っきりになった車内で
楽しかったなあっていう余韻の中

「言わなくてもいいか」とか
「なかった事に」とか

ぼんやりした頭で、すごく後ろ向きなことを思っていました。
というか、正直
どう話して、どう行動すればいいのか、
情けないけど、私には、わかりませんでした。



彼は運転中いつも、片方の手は、私とつなぎます。

その時も、
二人きりになった途端、いつものように、私に手を伸ばしてきました。

だけど、なんだろう。体は正直って言うか。

私はとっさに、手をひっこめてしまいました。



やばい、と思って、
ごまかそうと、鞄をごそごそしたりしてみたのですが
彼が、ちらちらとこっちを見ているのがわかります。

どうしよう、どうしよう、と思っていたら
彼がすうっと、車を道路わきに止めてしまいました。

「どうした?」と、心配そうにきく彼に
「なんでもないよ?」

私は結構、嘘が上手い方です。
このときも、まったく動じない声で、言うことができました。
だけど、今になって考えたら、
車をいきなりとめられて
どうしたの?ってきくのは、本来なら、私の方だったんですよね。

彼は、サイドブレーキをひいて、エンジンをとめると
シートベルトをはずして、こっちを向いて座りなおしました。

「言ってみ?」
「どうしたん、なんかいやなことあった?」


いやなこと。

その瞬間、ものすごい速さで、止まっていた時間が流れ出しました。
ていうか、いらないことまで流れ出したというか。

女の子の写真。エッチなことしてる写真。
女の人達のメール。エッチな内容のメール。

彼はいつもたくさんの女の人と話す。
その中には、かつての私みたいに、仲いい人もきっといっぱいいる。

彼は女の子に優しいから、年上にも年下にも人気がある。
実際、あの飲み会だって、彼のこと気にしている女の子は
実は、私以外にもいた。2回ほどしか参加しなかった子だけど
「このお酒苦い〜」って彼に半分飲んでもらってた。同じコップで。
そりゃあ、あの時、私はつきあってなかったけど、
彼には彼女もいたけど、
あの日、彼は、あの子を駅まで送って行ったんだよ。
だいたい、本当に駅までだったのかよ。

写真に残っているのは一回だったけど
本当はしょっちゅう遊んでるのかもしれない。

私とのデート中に、女の人から電話がかかってきたこともある。
仕事の話で、すぐ済んだけど
彼も相手に「え?今?彼女とデート中!えーやろー」
とか言ってたけど
相手が「彼女がいても関係なし」タイプの人だったら、まったく意味ないし。

メールが一通しか来ない日もある。
夕方から次の朝まで、メールも電話もない日もある。
あやしい日なんて、考えたら、いっぱいある。

あの写真、この助手席に、あの女の子は座ってた。ここに。
そのあとホテルに行ったんだ。

元彼女からのメールもあった。そりゃ、会ったら教えてって言っただけで
メールがきたら教えてなんて言わなかったけど、
私に言わなかったのは、未練が、彼女に残っていたからで
返信はしなかったみたいだけど、だけど…

…そうだ。

私は、一つの考えに、全身が凍りつきました。


返信はしなかったけど、電話したのかもしれない。




「宙ちゃん、何があったか言って?何でも言うていいねんから」
そういう彼に、もう私は、
「なんでもない」なんて、言えませんでした。


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