ヒカリよりも迅く
リュカ



 ミントアイスの美味しい食べ方を

ミント味のアイスが食べられるようになったら
それが大人の証だと想っていたこどものころ
ハッカ味のキャンディに怯むことがなくなったら
それが成長の証だと信じていた小さなころ
あれからどれほどの時が経っただろう
またひとつ大人への壁にぶつかった
きっと辛いものが食べられるようになったら
あたしはまたひとつおおきくなれるのだと
今でもあたしは辛いものが食べられない
昔の小さな迷信めいた想いは
からだが大人になった今でも息づいている
背伸びして買おうとしたミントアイスは
いつしか平気で食べられるようになっていた
好きでもないのに見つけると手を伸ばしてしまうのは
あのころのあどけない信念のかけら
ハッカキャンディはメンソールの煙草に姿を変えて
なんの苦もなくあたしの口に馴染む
どこか苦くてせつない冷たさは
何も知らない小さなあたしの影を少しずつひたひたと灼いていく
心だけはまだおおきくなれないね
あたしはまだ無意識のうちにミントアイスに手を伸ばしてしまう
まだ大人になりきれないから
もっとミントアイスを食べようとしてしまうのだろうか
たわいもない、意味もない
ただひとつの小さなあたしの記憶が
心を置いていくなと懸命に手を伸ばして呼びかけてくる


――――――
2005年1月11日の書き殴りノートより。
一部加筆・修正。
こうしておとなになれるなら、あたしはいくらでもミントアイスとハッカキャンディを食べてやる。
心にもハッカキャンディを。
ほんの一粒探して。



今日から、22歳。
あたしのヒカリを見つけること。
あたしのヒカリを追い抜くこと。
ささやかに誓わせていただきます。
夏の日、京都は祭で賑わい。
この地でこの日に生まれたかったと小さく想い。
ここで生きてやるのだと、固く固く誓い。

誕生日、この世界に向けて、ありがとう。

2005年07月16日(土)
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