同じ仕事中でも、堂々と会社から電話してくる殿方たち。

30代〜50代の自営業の殿方以外だと、残りは○クザなお仕事の方々です。
亜美が何度かつながったのは、いろんな闇金みたいなところの若い人達。

果てしなく幼い声をした20歳前後の男子が、思い切り楽しそうに話しかけてきます。

受話器の向こうからは、彼の楽しそうな声と一緒に怒鳴り声が響いてて
なんか怖いんですけど・・とりあえず会話を試みます。

『ねぇ、どこにいるの？』

『あ、いま？仕事中なんだけどさぁ〜あはは。カンケーネーから！あはは』

『・・酔っぱらってんの？何の仕事してるの？』

『えぇ〜？酔ってね〜よ〜。仕事は・・言えまへ〜ん！ギャハハ！』

とは言うものの、後ろの罵声で脅迫電話してるのがバレバレ。
すっとぼけて、教えてちゃんになってみる亜美です。

『ちょっと怖いんだけどー後ろの人たち。亜美に怒ってるの？』

『違うよ、金返さねーヤツらに電話して返してちょーだいって言ってんの。ギャハ。』

『本当は借りてない人も言われてたり・・ﾎﾞｿｯ』

『あ、知ってんじゃん？馬鹿なヤツらが払ったりすんだよ！ギャハハ！』

『えー自分の親が同じ事されたらどうするの？』

『身内にんなことするわけねーじゃん！』

『・・じゃなくて、他の会社から自分の家にそういう電話が掛かってきたらってコト』

『ああ〜？んなのカンケーネーよ！木刀持ってってバキバキにして埋めるね！ギャハハ！』

・・・・（￣◆￣; ）・・・

『自分も人に同じ事してるのに？』

『騙されるバカなんて死んでもカンケーネーじゃん！ギャハ！』

『サ・イ・テー』

『んだよ！んなこと言うなよー』

『だって・・人間のクズっぽいよね』

『おい！てめぇ調子乗んなよ。今からそこ行ってやろうか？』

『えっえっ！これって、うちの住所分かっちゃうの？』

こういうこと言う人たまにいるので、必要以上に怯えてみたりして。

『あたりめーだろ！こっちは逆探知持ってんだよ！てめぇの家電もバレてんだよ』

『やだ、怖いよぅ・・・じゃあウチの住所言ってみて』

『ぁあ？うるせーよ！すぐ分かるわけねーだろ！』

『じゃあ、どうやって調べるの』

『んなの調べられんだよ！鍵掛けたって無駄だからな』

亜美はこういう時、無駄にエネルギーを消費したくないので
かなりのオトボケちゃんを演じつつ会話しているのですが
いくら２ショット回線を通していても、在宅テレレの時に
こんな事言われたらちょっとビビるかも。通勤で良かった。

でも相手は怒りながらも電話を切らないので、もう少しだけ。

このての男子というのは血の気が多いわりに単純なようで
こちらが少し出方を変えると、意外と素直になったりします。
ある意味、悪い人ではないような・・気がしなくもないが。

本当に悪くて怖い人は、こういう男子を雇って使ってる人なのでしょう。
だから、きっかけ次第では、まだ更正の余地があると亜美は思うのだけれど。

なんと言っても妄想家の亜美です。若い頃にヤクザ映画を観すぎたためか
いたいけで純粋な頭の弱いチンピラ候補が、散々働かされて挙げ句の果てに
簡単に切り捨てられたり、死ぬはめになっちゃったり・・

受話器の向こうにいる男子の将来に、一抹の不安を覚えたりして。

と、亜美がくだらない妄想を抱いてる間に、電話の相手は同じ事務所にいるらしい
男子の彼女（恋人っぽい）に替わっていました。この人たち仕事してるんでしょうか。

『もしもし・・』

おとなしそうな女子です。ギャル臭は漂ってません。

『こんにちは』

『あ、どうもぉ・・』

『いくつ？』

『16・・』

『ええ？学校とか行かなくていいの？』

『家出中でぇ・・●×（都道府県のどっか）から出てきたばっかりでぇ・・』

｜｜｜｜｜｜｜｜/(≧□≦;)＼｜｜｜｜｜｜｜ｵｰﾉｰ!!

『早く家帰りなよ〜親心配してるよー』

なんだか、すっかりお母さん気分です。疲れる・・。
聞けば、さっきの男子とはメールで知り合ったと言います。
亜美が説教してたら、再び血気盛んな男子が登場しました。

『わりぃ！上の人帰ってきたから切る！また電話すっから！』

小声でそう告げると、ガチャン。プープープー・・電話は切れました。
プロフィールじゃなかったし、次に掛けた時には違うテレレが相手だろうけど。
彼女もいるのに何のために電話してきたんでしょうか。エロ会話も無かったし。

まぁそんな事はどうでもいいですね。

しかし、メールで知り合った人のモトに家出するとは。
こういうのこそ、イタズラとかネタであってほしいけど
あの16歳の女子が、早く親元に帰る事を密かに祈る亜美です。

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