台所のすみっちょ...風子

 

 

本能 - 2003年03月05日(水)

あれほど「買ってくるなよ!」とお願いしていたのに、

先週、旦那がついにスケートボードを我が家に連れてきた。


35000円也。


彼は私と目を合わせようとはせず、しかし口からはするすると高いトーンの

音を出しながら「このボードでサーフィンの体重移動の仕方を練習するんだぁ〜」

などと言う。


私は「年末にウエットスーツを購入したばかりというのに、またこんな物を・・」

と思い、同時に頭の中では無意識に今までサーフイングッズに

かかった金額が足されてもゆき、「しめて〜〜円也〜〜!!」という合算が

出た瞬間、彼の明るい声とは裏腹に、さめざめと泣きたい気持ちになって

くるのであった。

ふ〜〜・・彼のサーフイン熱は留まることを知らない・・・。


もともとスポーツ好きである。

私はまったくそれをしないので、彼の熱中ぶりは理解できないところもあったが、

「スポーツに対する思いは、きっと私がかつて持っていた絵に
 対する情熱と同じであるのだな・・」

と、そんな彼のすべてを呑み込むように、私は努めてきたのだった。

こんなふうに「趣味と金のバランス」が崩れるまでは・・。


しかし、今となってはもう遅い。

文句を言おうにもボードは稲荷町のスポーツ店から、

彼の手によりドナドナ的にこの家に、やって来てしまったのである。

まさか返して来い!と言うわけにも行かず、仕方なく我が家の一員と

なってしまった。


その夜、彼は本当にうれしそうであった。

寒い日であったのに、10時頃に夕飯を食べ終わると

「ちょっと滑ってくるね〜〜」といそいそと出掛けて行った。


スケボーのできる場所は近所で限られている。

私は彼が帰ってくる間中、古参の若いスケボー少年達に

「ジジイがこんなとこで若ぶってんじゃねぇ〜よ!」と因縁をつけられ、

ボコボコにされるんではあるまいか?と非常に心配だったが、

一時間後帰ってきた彼は、頬を紅潮させとても愉快そうであった。


そして「すっごく良かったよ〜ありゃ〜練習になるね!」

と、いかに陸上でスケボーをやることがサーフイン技術の向上になるか

私にトクトクと説明してくれ、「こうやってぇ〜・・こうやってぇ〜・・」と

フローリングの床の上でポーズまで取ってくれる。


その恰好を見てるうち、彼が急にボードを買ってきてしまったことなど、

なんだかどうでもよくなってしまった。

というか、可笑しささえ感じた。

両腕を広げながら、肩を少しいからせ、腰を落とし、足をたぶんボード

の幅であろうと思われる分だけ開いた姿は、まさに類人猿。

食べ物を他の仲間にとられて唖然と固まる、人類の祖先のようであった。


その時、私はようやく分かったのだ。

彼のスポーツ好きは趣味ではない。それは体からむくむくと自然に湧いてくる

例えば性欲とか食欲と同じたぐいのもの。

そう、”本能”なのだと。


おしまい。


...




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