あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2005年11月18日(金)

うつくしい、夜の野原はうつくしい
言葉に満ちている
月の描き出す影をぬいながら
鹿が駆けてゆく。一頭、また一頭

わたしは声をひそめていた
いつだってそうやってひそめて
うつくしい、うつくしいと放たれる
賞賛の声を食んでいるのだ

草の上には落とすものか
ひとかけらとて
蟻どもに分けてはやるものか

うつくしい、ものは、うつくしい
走り去る獣の尾の先までも
その言葉は満ちて
はちきれてしまう、影の中に隠れていても

月が落ちる、いつか曙の山並みの影に
明るく、私が照らし出されるとともに
その声はどこかへ来てしまうだろう

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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe