...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2003年02月13日(木)

「サチの母親なんだけど」

僕の母親の話?
ドアを開けて入ろうとした手が止まった。

「男と、逃げたらしい」
「あなた調べたの!?」
「さすがにあれから気になっててな。そういう会社に調べさせた。
 どうも相手の男が子供を連れてくるなら結婚しないと言った様だ。
 当時のあの女の同僚だった人がそう聞いていたらしい。
 今は・・・結婚して何食わぬ顔で暮らしているそうだよ」

動きを止めたまま、僕は両親の話に聞き耳を立てていた。

「それで・・・どうするの?まさかサチの事そんな人の所へ・・・」
「いや、あいつには何も言わないし、あの女にも連絡は取らないよ。
 ただどういう事情があったのか、知りたかっただけなんだ」
「それだけ?」
「それだけだ」
「でも、あの子が母親に会いたいって言い出すかもしれないわ」

「言わないよ」

ビックリした顔で両親がこちらへ体を向けた。
僕はずかずか今に入り、椅子に座って言った。

「もう子供じゃないんだし、そんなのトラウマにもなんないよ。
 今更会いたいとも思わないし、向こうだってきっと迷惑だよ」

じゃおやすみ、と言って部屋を出た。

居間ではしばらくドアを見つめたまま唖然としていた両親が
顔を見合わせて複雑な顔で笑っていた。


-




↑エンピツ投票ボタン
My追加

 

 

 

 

INDEX
昨日  明日

Mail