蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




クリティカルヒット
2004年01月17日(土)
外から家に帰ってきて、
ジーンズを脱ぎハンガーに掛けようとした時の事だった。

不意に尻ポケットからスルリと抜け落ちる何か。
嫌な予感。
滑り降りる視線の先に、
僅かに映った細長く青い物体。
ハッ!もしや、アレは…、「ケータイ」?
こういう時こそ、
男子たる物冷静沈着でなければならない。
忽ち脳髄内を計算式(デタラメ)が駆け巡る。
ウム、勝てる。
素早く足を後退させる。
これで危険は回避されるはず。
この間、僅か0.3秒である(推測値)

しかし、母なる大地の力「重力」は、
やはり偉大であった。

微細な人類の反射能力など嘲笑うかのように、
ケータイは偉大なる重力に導かれるまま、
右足の小指に見事着弾。
しかもアンテナ部。


「声にならない叫び」というのは本当にある。


何よりも真っ先に悪寒が全身を駆け巡ったのは意外だった。
そして、その直後に襲う、例の痛み。

「…ッ!!アッ!アィッ…!!オアアッ…!!」

字面だけ浚うとなんだか卑猥な感じのする呻き声を上げつつ、
部屋の中を気が触れた犬の如くグルグルと回ってしまった。
ようやく痛みの第一波が引くと、
今度は床にしゃがみこんで、
着弾点"グラウンド0"に息をフーフーと吹きかける。
実に刹那的な対処療法である。
こんなことで痛みが引くくらいなら、
株式会社ヒサミツは倒産し、
フジテレビが「白い巨塔」でウハウハ言うこともなかったろう。
しかし、そうせざるを得ない切実さが、
あの痛みにはある。

すべての痛みが鈍痛に変わり始めた頃、
今度は痛みが怒りに変ってきた。
こんな所にうまいこと落ちてくるケータイにも腹が立ったが、
何より、
なんでこんなに足の小指は痛いのだ!
そして、
なんでこんなに足の小指は実直なまでに痛い目に合うのだ!
と、やり場の無い怒りが沸々と湧いてくる。
もし、日本人の中に、
「足の小指を柱にぶつけた事がない」
という人がいるなら是非お会いしてみたい。
そして是非ともその幸運にあやかりたい。
あわよくば、その期に乗じて内定を獲得し、
ついでに、この禁欲生活に終止符を…

いや、別に好きで禁欲してるわけではなく、
気が付いたら自然にそういう流れになってたんだが…


と、とにかく、
足の小指がこれほどまでに痛い目に合う必然性が、
一体どこにあるのか!?
と僕は問いかけたいのだ。
以前にも同じような内容の日記を書いた気がするが、
そもそも、痛みが大きい部位というのは、
生命活動上、何らかの重要な役割を担っている物ではないのか。
果たして、足の小指に何の役目があるというのか。
物を掴める程の長さもなく、
かといって何らかの生産活動に従事している様子もない。
いたってのほほーんとした面構えで、
足の端っこに鎮座しおあすその姿からは、
ここをぶつけるとすごーく痛いよー、
という切実さは微塵も感じられない。
卑怯ではないか。
それとも何か?
まさか、この足の小指に、
実は生命誕生の重大な秘密が隠されているとでも言うのか?

着弾点を中心に微かに腫れあがった、
その可愛らしいお姿を眺めるにつけ、
この痛みの核心が気になって仕方がない。
たかが足の小指でここまで引っ張る自分もどうかと思うが、
しかし、このままでは、
気になるし、痛いしで眠れないではないか。

どうか教えて、
エライ人。
この際、エロイ人でもいいや。




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設計*しゑ(繊細恋愛詩)
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