2005年12月26日(月) |
咎狗(ケイスケ×アキラ) |
「ケイスケ、帰るぞ」
「うわ、まって、もう少し!」
漸く談話室にあわられたかと思って声を掛けると、ケイスケはダンボールを三箱抱えて慌てて奥の部屋に消えた。 暫くし、軽く肩を回しながら戻ってくる。
「ゴメン、工場長に頼まれて荷物整理してたんだ」
先日、技術者が1人辞めた。まるで夜逃げのように姿を消して、残ったのは社宅に置き去りにされた私物だった。 新しいスタッフを雇うにも、もし社宅を希望されたら部屋を空けなければならない。 もしかしたら、ひょっこりと戻ってくるかもしれないという甘い考えを持つには、まだ平和とは言えないのだ。 けれど、誰も手を付けたがらないので、どうやら下っ端でお人よしのケイスケに白羽の矢が立ったらしい。
「じゃ、お先に失礼します」
まだ談話室で語らう従業員に声を掛けて、アキラとケイスケは家路についた。 また明日〜とカラカラ笑う先輩達に、ほっと息をつく。 技術者が何故消えたのかと心のどこかで心配しつつも、それを深く追求しない。けれど、いつでも戻ってこれるようにと、私物は捨てられることなく、工場の荷物置き場の片隅にそっと保管された。 人には人の事情がある。工場長の口癖のようなもので、アキラとケイスケはその気持ちに助けられた。
独身者は殆ど社宅住まいになるのだが、社宅ではなく、少し離れた場所に2人で生活することにも何も言ってはこない。他の従業員には、幼馴染で家族みたいなものだからと言うことで簡単に済ませてくれた。
「ねぇアキラ、ココはもう逃げなくていいんだよね」
「当たり前だろ」
「そうだね。そうだよね」
嬉しそうに笑うケイスケに、アキラもまた笑んで答えた。 ケイスケの抱えるものは大きい。普段は忘れたように明るく生活をしているが、真夜中に発する悲鳴にも似た寝言は、幾度となくアキラをも苦しめた。 ケイスケが落ち着き、穏やかな寝息を取り戻すまで、その手を握り、寄り添って眠る。 起こすことは、決してしない。 ケイスケを襲う夢は、ケイスケに架せられた罪の重さであり、償い続けなければならないことだ。 それに負けないように必死で戦うケイスケを見守ることが、アキラがケイスケの傍にいる理由でもある。
愛とか、義理だとかそういうものではない。
いま此処で生きている限り、アキラはケイスケのものであり、ケイスケはアキラのものであるのだ。
だから、ケイスケの抱えるものは、アキラも抱えて生きていく。
それは、もう愛ではなくて――。
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随分前に書いていたものなです。10月くらいに下書き保存したまま、今日まで忘れ去ってました。というわけで、中途半端なのはそんな理由です。 忘れていたのです。ごめんよーケイスケ! 本当は、イチャイチャさせる予定だったみたいなんですが、プロット無しの行き当たりバッタリで書いているのでスミマセン…思い出せません!
そのうちリベンジしますですよ!!!
この2人は、愛とか恋だとかそういうものとはまた違うと思うんですよね。 よく空気のような存在といいますが、まさにそんな感じ。
手離して、離れてしまって漸くその人の大切さに気づいてしまう。
普段は、ワンコなケイスケが、抱えているものを必死で背負っていこうとする姿が好きです。
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