まだ全然実感のわかないまま最終出社。 手続きそのものは、15分で終了。 その後、ノートPCの中身をすべてクリアして、 システム部門に返却。 何人かの知り合いに挨拶して回って、終了。
すべて終えて、セキュリティカードを返却して、 エレベータに乗ったとき、不思議なくらい寂しかった。 転職当初は、「今の会社」としか呼べなかった。 今では無意識に「うちの会社」と言っている。 3年間は短いようで長かった。 いろいろなことがあった。 いろいろな人と知り合った。 成長できたかどうかわからないし、 貢献できたかどうかはもっとわからないけど。
家路を歩きながら、まだ実感がわかなかった。 このまま1〜2週間お休みして、 また気分も新たに新しいプロジェクトに行くような、 そんな錯覚を覚えた。
どこにも属さない、初めての夏休み。 私は、今まで浪人もせず、留年もせず、 前回の転職時も間をあけず、ずーっと立ち止まらずに来た。 だから、そろそろ、立ち止まる必要があったのだ。
お世話になった人たちに今日出した最後のメール、 チラホラ返答が来たけれど、こんな感じ。
・とうとうですね。おめでとうございます♪
・Vacation、楽しんでください。そのままニート突入もおいしいかと。
・会社としても貴重な戦力を失いますね。残念です。
・近いうちに一度飲みに行きましょう。
・一度ニュートラルになると、色々と見えてくることもあると思うし、 まずはノンビリと太陽とともに生活する毎日をおくってください。
32歳の1年間だけを考えれば、 会社に留まっていた方が得策だったろう。
でも、まだ続くはずの人生を考えたとき、 女の32歳はキャリア的にギリギリの年だ。 2〜3年後に、今の会社にいられないということを痛烈に感じても、 それからではキャリアを立て直すのに遅すぎる。 今だって、もう、遅いくらいなのだから。
もちろん、明確な目的があれば、 いくつだって遅すぎるなんてことはない。
でも、何もない私が、何とか生きていくためには、 今転職しておく方がいいはずなのだ。
先のことはわからないけれど、 ここ5年くらいのことをボンヤリ想像しただけでも、 答えは簡単に出る。
大体、今の会社はレベルが高すぎた。 私にはついていけなかった。 なんとか順調に昇級はしてたけど、 来年こそは、置いてけぼりをくらっていただろう。 同期と競う気も何もないけれど、 でもそういうことも少しはひっかかっていたのだ。 要求されていたのは、給与に見合った成果だったと思う。 私にはその成果のレベルも給与のレベルも高すぎたということ。
だから。
これでよかったのだ、と。
そう思う。
そこに迷いはない。
でも先が見えないことに対して、ちょっとだけ不安。
とりあえず旅行から戻るくらいまでは、 何も考えずにいられるけれども、 夏が終わり、空気が冷たく澄み切って、 やがて寒風が吹くようになれば、 私の心も未来も凍りつくだろう。
そういうことだって、想像に難くない。
それでも。 もう決めたことで。 だから。
これでいい。
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