2007年12月26日(水) |
「パンズ ラビリンス」 |
2006年スペイン・メキシコ 監督 ギレルモ・デル・トロ キャスト セルジ・ロペス マリベル・ペルドゥイバナ・バケロ
悲しみや、希望や、安堵や、切なさ、いろんな感情が混ざり合って・・まるで迷宮の中にいまだ、さ迷っているかのような・・そんな気持ちでいっぱいの鑑賞後です。
おとぎ話を信じる少女オフェリアの前に現れた牧神パンと彼の示すラビリンス。 多くのおとぎ話のヒロインが試練に立ち向かわなければいけないのと同様に、彼女にも3つの試練が与えられます。 けれども、彼女の試練はそれだけではないのです。現実世界の試練はもっと厳しい。臨月の母の具合は悪く、新しい義父は冷酷無比なフランコ政権の大尉。
現実とおとぎ話、両方の試練に立ち向かう少女の世界が、やがてひとつに融合していく・・、見事というか、あぁ・こういう描き方、こういう映画の世界もあるんだ・・って。 ただ異色なファンタジーとかそういう一言ではとても表せられない、見る人ひとりひとりが、いろんな風に、さまざまな方向から、見たり感じたりできる・・、まさにラビリンスな世界でした。
牧神パン・・、昔読んだ神話では、いつだって性格が悪くって、しかも手が早い!(苦笑)いや〜なヤツ風に描かれていたので私の中ではとっても印象の悪い神な上に、映画でのあの目つきの悪さ(笑) ダメダメ・・オフェーリア、彼を信じちゃダメ!ってそんな風に私見てしまいましたよ(苦笑) いや、でもパンだけじゃなくって、この映画に登場するおとぎ話のキャラクターはとても可愛いとはいえませんもんね。ナナフシが変身する「妖精」だってどこか怖い。巨大カエルに、極めつけはこどもを食べるベイルマン。手に目がつくなんて!!どういう発想なんでしょうーー(不気味な抽象画みたい?)でもあれはほんとインパクトありましたよ。
だけど、そんなおとぎ話の怪物よりも、もっともっと恐ろしくて、身の毛もよだつほどの恐ろしさを見せてくれたのが、現実世界のビダル大尉。農民に対する残虐な行いから、ゲリラへのリンチ・・。もう・・見ていられない・・って思うくらいの酷さ・・。 なのに、音楽かけながらのあの髭剃りシーンや、靴をみがくシーン、時計へのこだわり・・。こういうシーンを入れてあるから・・ニクイんですよね。
ビダル大尉や唯一オフェリアを心配してくれるメルセデス・・演じる俳優さんも素晴らしい。 でもやはり!!オフェリアを演じたイバナ・バケロ。彼女の存在無しにはこの映画は語れませんよね。知的な額にあの眼差し。「もう子どもじゃなんだから」って母親に言われる・・そんな微妙な年頃の少女の愛らしさ、大人っぽさを見事にみせてくれる。 グリーンの(アリスのような)服も可愛いんだけど、私がハッとしたのは、浴槽の端に腰掛けてあの大きな(パンのくれた)本をめくるシーン。バスローブがめくれて・・足が見えるあのシーンが・・とっても印象的でしたよ。
ゆっくりと見せてくれるところは見せてくれて、どんどんと緊迫するシーンはテンポ良く・・そういう緩急の付け方・・っていうか、最後まで一瞬たりとも目が離せない。 ラストシーンは、悲しい・・けれど。でも喜ぶべき?そんないろんな思いがまたこみ上げてしまう・・。 これはもう、忘れられない映画の1本となりました。
そうそう、忘れられない・・と言えば、あの言葉。 オフェリアのお母さんが「魔法なんか存在しないの」「人生はおとぎ話じゃない」っていうシーン。 「いつまでも子どもじゃないのよ」「もう大人なんだから」 大人になればなるほど、魔法の存在を信じたい、現実が厳しければ厳しいほど、人生はおとぎ話だと・・思いたい。 こどもよりも・・もっと大人にはファンタジーが必要だと私には思えるんですけど・・ね。
|