日記
文緒



 

鷺沢萠さんの本を読んでいた。

そのなかに、
「失恋」ということばはあるが「失愛」ということばを聞いた憶えはないというような事が書いてあった。


その文章を目にした瞬間、本を閉じてしまった。


読むのが嫌だった訳ではなく、この文章が私の深い所に触れる予感がしたから。



心を落ち着けて、もう一度ページを開く。


読みすすめるうちに、鼓動が早くなり、涙が溢れそうになったので、慌てて視線を本から外し、窓の外の景色に移した。

過去の自分の切ない気持ちがありありと甦ってしまい、息苦しいような、叫びたいような衝動に駆られた。






そうなんだ。
あの時の恋は失ったけど、あの時の愛は失っていない。
そう思えた。
ちょっと笑顔になれた。



そして、そんな風に思えた自分がちょっと嬉しかった。



過去の自分に教えてあげたい。
大丈夫だよって。



2004年07月22日(木)
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