雪さんすきすき日記
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2020年10月18日(日) 「Human:Fall Flat」のこと

 7時頃起床。起きたら日が出ていたので、この機を逃すまいと布団を干して部屋を掃除した。
 午前中は献血。昨日から服用している降圧剤のおかげか、最低血圧が100を下回ってちょっと安心。なお、服用している薬は献血には影響が出ないものであった。

 「Human:Fall Flat」(NO BREAKS GAMES)の感想を。
 ふにゃふにゃと動く主人公が夢の世界を冒険する3Dパズルアクションゲーム。
 操作は移動、視点移動、左手で掴む、右手で掴む。視点を上に動かすと腕が上がり、下に動かすと下がるので、視点を上下に移動させることで物の上げ下ろしができる。物理演算が作用する物体を移動したりぶらさがったり破壊したりと活用して仕掛けを突破し、出口に到達するのがゲームの目的。各面ごとに主題が決まっており、それに応じた仕掛けが用意されている。

 主人公は普通に移動しているだけでもふらふらとして芯が無く、持ち上げたものを左右に揺らしながら覚束ない千鳥足で歩く様は実に頼りない。操作精度はパズルゲームとしてはあるまじき低さであり、物を置こうとすれば狙いの位置から外れ、ボタンを押そうとすれば壁を突くといった感じで、思い通りの動きをするにも一苦労。しかし、そのもどかしさこそがこのゲームの面白さの醍醐味であった。思い通りに動かない主人公はしばしば予想外の動きをして笑いを誘い、また失敗を繰り返して仕掛けを乗り越える姿には健気さを感じるように。いつしか画面の中の主人公と一体感を覚え、物を持ち上げたり崖を這い上がる際にはコントローラを握る手にも力が入るようになった。
 そのくせ、どれだけ落下したり吹っ飛ばされたり叩きつけられたりしても全くの無傷であり、頼りない動きとは裏腹に抜群の耐久力を見せる主人公。仕掛けの方もこの耐久力を前提としたものが多く、ぐったりした姿で空高く吹き飛ばされる主人公の姿は、それだけでも笑いが取れるほど愉快であった。細かい作業だけでなく大胆な動きを見せてくれることで、プレイヤーの鬱憤を晴らすように上手くつり合いを取っているような印象を受けた。

 パズルゲームとしては柔軟性が高く、1つの仕掛けに複数の解法が用意されていることも珍しくない。近道も多数用意されており、プレイヤーの発想に応えてくれるところが好印象。自力でクリアした後に他の方のプレイ動画を参照したところ、全く違った発想に驚かされたことも少なくはなかった。
 また、物体には物理演算が作用するが、これがまた実に大雑把。特に、重さの概念が薄く、巨大な箱や岩などは軽々と持ち上げてしまうし、一方で細い棒1本で巨大な板の回転を押さえてしまうことも。夢の世界の物理法則は現実世界の常識とはかけ離れているが、それがまたプレイヤーの発想に対する挑戦意欲を掻き立てくれるところもあった。
 パズルの自由度の高さもさることながら、この操作精度の限界に挑むような細かい作業が面白かった。例えば、配線の端子を接続するという作業だが、ふにゃふにゃした動きで細かい作業を要求させることに最初は戦慄したものであった。しかし、慣れてしまえば意外と何とかなるもので、配線を正確に接続することで動きだす機械を見て大きな達成感が得られた。また、輪っかを留め金に引っ掛けるという作業もこの操作精度でやらせるものではないと思ったが、これまた慣れると普通に引っ掛けられるようになって、操作の上達への実感が得られた。その他、車両や船舶の操作などもかなりせわしない動きにはなったが、意図したとおりに動いてくれるとそれだけで楽しいものがあった。

 演出としては、グラフィックはテクスチャが控えめでポリゴンむき出しであるが、物体の特徴をよくとらえた描画はそれがどのような動きをするのかを連想させるのに十分なほどであった。また、簡素な描写は視認性が高く、プレイする上でとても快適であった。さらに、無機的な夢の世界というこの作品独自の世界観を描くことにも大きく寄与していた。
 楽曲は特定の場面に切り替わると流れ出すが繰り返しはせず、環境音の中で作業をすることが多かったが、操作に集中するのはこの方がありがたかった。楽曲は哀愁を帯びたものが多く、主人公の不条理で孤独な奮闘にも合致していた。

 全面クリアして全実績も達成。思い通りに動かないというアクションゲームとしては禁忌ともいえる要素を、愉快な見た目で魅力に転じさせたことに強い新鮮味が感じられた。その上で、パズルの自由度の高さによる多様な解法は柔軟な発想を引き出してくれたし、操作精度の限界に挑ませるような作業も挑戦意欲を掻き立ててくれて、とても充実した攻略を楽しませてくれた作品であった。


氷室 万寿 |MAIL
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