雪さんすきすき日記
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2020年08月24日(月) |
「Ori and the Blind Forest」のこと |
「Ori and the Blind Forest」(Moon Studios)の感想を。プレイしたのはDefinitive Editionの方。
精霊樹の光により繁栄を享受していたニブルの森。しかし、運命の夜に起きた出来事により光は消え去り、森からは命が失われていった。主人公である精霊の少年オリを育ててくれたナルが亡くなり、そしてまたオリの命も消えそうになったその時、精霊樹の奇跡によりオリに再び命が吹き込まれた。そして、精霊樹の化身であるセインと出会い、オリは自らに課せられた使命を知る。オリはセインと共に、精霊樹の光を取り戻しニブルの森を蘇らせるための過酷な冒険へと向かう。
美しいグラフィックと過酷な難易度が特徴の2D探索アクションゲーム。主人公のオリが森の長老樹たちの力を借りながら、3つのクリスタルを復活させて森に光を取り戻すのが目的。 初期操作は移動、攻撃、ジャンプのみ。攻撃はセインが行い、射程に入ると自動で追尾する弾を放つ。各所に点在する長老樹の力を吸収することで、壁登りや二段ジャンプ、踏みつけなど可能となる行動が増えていき、それに伴い行動範囲が広がっていく。この辺りは、一般的な探索アクションのシステムである。 オリにはライフセルとエナジーセルの2つのゲージがある。ライフセルは体力で、敵の攻撃や障害物に触れると減少し、無くなるとミスとなりセーブ地点から再開となる。エナジーセルは溜め撃ちやセーブポイントであるソウルリンクの作成、道を閉ざしているエナジーゲートの開放など様々な用途で消費する。いずれのゲージも、マップ内に配置されているアイテムを入手すると最大値を増やすことができる。 また、敵を倒すかマップ上のアイテムで入手する能力セルを集めると、3種類の能力ツリーからオリの能力を強化することができる。強化はクリアに必要不可欠ではないが、より有利に攻略できるようになる。
まず目を惹いたのが、その美麗なグラフィック。手塗りのグラフィックが織りなすニブルの森は今や暗闇に囚われてしまったものの、それでもなお豊かな自然の美しさをもってオリを出迎え、プレイヤーを魅了してくる。しかも、美しいのは背景のような静止画だけではない。道端の草木やキノコ、木の表面の苔など、数々の自然の小道具が冒険の先々でオリの動きに合わせて質感に満ちた動きを見せてくれて、画面の中に広がる世界への没入感を強力に高めてくれる。この、細やかな演出を惜しげもなく随所で見せてくれることに対して、製作者のただならぬ情熱を感じた次第であった。ただ、美麗すぎるグラフィックが、地形と障害物の見分けを難しくしたり、次に行くべき場所を分かりにくくしていた場所も多くはないが見受けられたのも事実であった。 キャラクターの動きにも注目すべき点は多かった。この作品には主に3人の人物が登場するのだが、いずれも特徴的な動きをもってその人物の人となりを見事に表現していた。主人公のオリは小動物のような軽やかな動きが無垢で愛らしく、育ての親のナルは鈍重ながらもしっかりとした足取りで頼もしさに満ちており、グモの長い手足で移動する器用さは後の伏線となっていた。そして何より、オリの軽快で多彩な動きは、アクションゲームの醍醐味であるキャラクターを動かす楽しさを存分に堪能させてくれた。長老樹に出会う度に増えていく行動は躍動感にあふれたものが多く、オリの小さな体躯で文字通り縦横無尽な動きがとれるようになるのはただひたすらに刺激的であった。とはいえ、取れる動作が多くなると入力が被って誤動作することもあり、意図せぬ動作の暴発には結構悩まされた。特に、ジャンプ中に下入力で踏みつけに移行してしまうのは頻発した。入力の精度を高めればいいだけの話だが、緊張する場面ではつい意図せぬ方向に入力してしまうのであった。 楽曲の美しさも特筆すべき点の1つ。オーケストラによる演奏により収録された数々の楽曲はどれも情感に溢れており、場面に応じて編曲された主旋律がそれぞれの場面にこれ以上ないほどの合致を見せていた。特に、クリスタルを復活させた後の脱出の場面で流れる劇的な曲は、その波乱に満ちた状況と合わせて強く印象に残っている。
で、私もその美しい雰囲気に騙されて、難易度の高さに舌を巻いた口である。序盤からどう考えても移動能力を得てからでないと突破できないだろうという場面をぎりぎりの動作で突破させることが続き、当初は製作者の正気を疑ったものである。しかし、その狙いが理解できた途端に、絶妙な操作で難所を乗り越えることを繰り返すのを楽しむ、手応え抜群のアクションゲームとして認識が改まった。この作品は難易度こそ高いもののセーブ地点が任意に設置できるので、難所を抜けたらセーブを繰り返せば地道ながらも先に進むことができる。小さな歩みでも積もり積もれば大きな手応えとなって返ってくるわけで、それをしっかりと感じさせるように難所が配置されている絶妙なマップ構成だったと、今振り返ってみると思う次第である。 それでも、水のクリスタルの脱出は過酷であった。まだ序盤で操作にもそれほど慣れておらずオリの機動力も低い上に、打撃という非常に癖の強い操作を駆使させられるマップは、挫折するには十分すぎる難易度である。しかし、前述の劇的な曲が折れそうな心を奮い立たせてくれて、最後まで頑張ることができた。この過酷な難易度だからこそ表現できる演出というものを知ることができたのは、非常に大きな収穫であった。なお、その後の2つのクリスタルの脱出はここに比べると遥かに簡単で、拍子抜けしてしまった。 あと、タイムアタックの攻略のために上級者の動画を拝見したところ、移動からアイテムの回収からその効率の良さに感服したのだが、それは裏返せばマップの完成度の高さを物語っているとも言える。初回プレイ時には3時間以内でのクリアなど不可能だと思っていたが、それを可能とする経路がしっかりと用意されている周到さは流石であった。特に、打撃を活用した近道の数々はこの作品ならではであり、それを用意する方も見つける方も実に大したものである。この作品に限らず、探索アクションでタイムアタックの実績がある作品は、システムを活かすようにマップが作り込まれているものが多く、その度に感心させられている。
物語は大半はキャラクター同士の台詞の無い掛け合いによって語られて、文字による情報は限られている。なので、全てを把握しているのか自信は無いが、光と闇、そして親子の愛情が主題として挙げられているように感じられた。精霊樹とオリ、オリとナル、そしてクロと親子の愛情が生んだ悲劇の連鎖が今回の出来事の原因であり、そして収束をもさせたのではなかろうかと。それにしても、この作品のいわば敵役であるクロへの仕打ちは本当に哀れでしかない。この出来事での最大の被害者は精霊樹ではなくクロであり、逆に精霊樹は加害者でもあるので、最後まで報われなかった結末には今でも納得はできない。 ところで、幕間のデモはムービーに依らずキャラクターの動きや演出効果だけで表現されているのだが、これがムービーに匹敵するどころか逆にムービーでこの表現は難しいのではと思わせるほどの内容であり、この作品の表現力の高さを雄弁に物語っていたのも非常に印象的であった。
初回クリアは12時間ほどで、全実績は35時間で達成。さすがに死亡回数0でのクリア実績はセーブデータの巻き戻しをしないと無理だったが。 とある紹介記事に「雰囲気ゲーだと思ってプレイしたら見事に騙された」という感じに書かれていたが、至極納得しかない。しかし、美麗な演出と手応えのある攻略の両方を楽しめたのだから、大変お得な内容であったといえよう。過酷な難易度だった故に印象に残った場面も数多くあり、プレイして良かったと思える傑作であった。 なお、この作品はしぃゲーで紹介されていたのをきっかけにプレイした。しぃゲーは私が未プレイの良作を紹介してくれる頻度が高く、大変助かっている。
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