雪さんすきすき日記
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2013年11月07日(木) 続・「天壌のテンペスト」のこと

 「天壌のテンペスト」(LION HEART)の感想を。

 幻想郷で頻発する地震。時を同じくして、竜宮の使いが地上の妖怪と結託して謀反を起こす等の不穏な噂が天界に流れる。この噂に納得できない天子は真相を確かめようとするも、衣玖は黙して語らず。それどころか、紫には詮索の妨害を受け、まるで噂を肯定するかのような事態に。
 果たして幻想郷に何が起きているのか。そして、衣玖の真意は。

 この作品は、東方二次創作横スクロールアクション。主人公は「東方緋想天」で登場した比那名居天子。相手の気質を読む能力と緋想の剣を携えて、道中の障害を乗り越え立ちはだかるボスを倒して天界へと至る妖怪の山を目指す。
 天子の行動は、移動とジャンプ(飛行能力は紫が封印)、攻撃、剣撃、回避、スペルカード、攻撃スタイル変更と結構な種類に。攻撃は、敵との距離が近いと打撃となり、格闘ゲーム並みのコンボで攻め立てる。操作は基本的にボタン連打で、レバーの方向やボタン長押しで様々なコンボに派生するというお手軽仕様。一方、敵との距離が遠いと射撃となり、気質(敵を攻撃すると得られる)を消費して飛び道具で攻撃する。剣撃は緋想の剣で相手を攻撃。霊力(時間で回復)を消費するものの攻撃力は高く、それ以外にも仕掛けの操作や後述の天候発現にも活用する。スペルカードは気質を大量に消費しての強力な攻撃。射撃とスペルカードは複数用意されており、喜怒哀楽4つの攻撃スタイルにそれぞれ1種類ずつ設定して使用する。これら攻撃スタイルはゲーム中随時変更可能であり、場面に応じて武器の使い分けを行うことができる(ちなみに、ポーズ時のメニューから攻撃スタイルの設定も変更できるので、事実上全ての射撃とスペルカードを選択できる)。
 回避はこの作品の特徴的な動作であり、霊力を消費してレバーを入力した方向に無敵の高速移動を行う。この回避で敵の攻撃をすり抜けると、攻撃した敵の気質を掌握する。気質を掌握された敵は防御力が低下するが、さらにその状態を緋想の剣で攻撃すると気質に応じた天候が発現し、天子の行動や周囲の環境に一定時間変化が生じる。天候の効果は、単純に攻撃力が上昇するものから、回避行動無制限、風に乗って遠くまで跳べるようになる、雨が降って燃え盛る火を消すなど様々で、大抵は天子に有利となるよう働く(大抵はとあるように、状況によっては不利に働くこともある)。道中では特定の天候を発現させないと乗り越えられない障害も登場し、この作品を攻略するのに天候の活用は必要不可欠である。
 天子の行く手を妨害するのは、道中の毛玉や妖精といった雑魚に地形や仕掛けのような障害、そして面の最後に待ち構えるボスである。地形や仕掛けは前述のとおり天候の発現を利用しないと乗り越えられないものが多く、その内容も後半になるにつれて手の込んだものとなっている。天子は体力制で、敵の攻撃を受けて体力が無くなるとゲームオーバー。体力は一定時間で回復するので事実上無尽蔵だが、地形の無い場所や水深のある場所への落下(天子は泳げない)は一発でゲームオーバーとなる。
 ボスは因縁をつけられたり勘違いされたりと割と散々な理由で戦う羽目になり、通常攻撃とスペルカードを使用して原作同様複数段階の攻撃を仕掛けてくる。ボスは体力のほかに防御力を示したアミュレットゲージが存在し、このゲージを0にすることでアミュレットブレイクとなりボスを一定時間無防備にすることができる。無防備状態での攻撃の通りは通常状態の比ではなく、容易に体力を減らせるようになる。なお、アミュレットゲージは剣撃より打撃の方が減る割合が大きく、射撃は種類によって威力が異なる。また、ボス戦で天候を発現するとアミュレットゲージが弱体化するため、ボス戦でも天候発現は攻略上重要な要素となっている。ちなみに、正確な条件は不明だが、天子が強打を喰らわなかったり倒れずに最後の攻撃まで到達すると、ボスの最終符が裏最終符に変化する。

 完成度の高いアクションゲームは、自機を操作しているだけでも面白いというのが私の持論であるが、この作品では更に自分のプレイに魅了されるにまで至り大きな衝撃を受けた。何しろ、自分が入力した操作のとおりに画面内の自機が動くという、ある意味結果が自明な行動のはずである。達成感や高い満足度ならいざ知らず、魅了されるというのは余程の大事である。
 とにかく天子の一挙手一投足、特に攻撃に関わる動きの迫力と躍動感が素晴らしい。細かく書き込まれて滑らかに動くドット絵に、攻撃の種類に応じて溜めやブラーといった演出が事細かに施され、そして極めつけはその威力が肌に伝わるほどの豪快な効果音。これら演出効果の見事な融合は、打撃では要石の潰れる衝撃が、剣撃では緋想の剣の鋭い太刀筋が、コントローラを通じて手に伝わるような錯覚すら覚えるほどであり、その錯覚が先の演出効果と合わせて更に感情の根源的な部分を刺激して、そこから得られる快感にすっかり魅せられてしまった。
 とはいえ、その魅力も発揮できる場が無ければどうしようもないのだが、その点においてはこの作品はボス戦、道中共に抜かりが無い。特に、ボス戦では痛快無比という表現がこの上なく当てはまるほどの活劇を存分に堪能させてもらえた。そもそも、天子の攻撃を真正面から受け止められる強さと体力を誇るボス達に、打撃から剣撃から遠慮なく発揮できること自体が大きな喜びである(勇儀の気持ちが良く分かる)。そして、攻撃を既の所で回避して気質を掌握し、間髪入れずに緋想の剣で一閃するまでの一連の流麗な動きには見惚れるばかりで、アミュレットブレイクから一方的に攻撃を叩き込む展開では圧倒的な優越感に浸り、ボスへの止めの一撃を与えたときの閃光と影、轟音による息を呑むような演出には最早言葉も出なかった。これらの演出を体験してしまうと、単に勝つだけでは満足できず、いかに華麗な戦いを演出し、いかに格好良く止めを決めるかを突き詰めたくなる。
 併せて、ボス達の動きやら繰り出す攻撃やらも天子に負けじと演出から内容から魅せるものばかり。体験版で鈴仙のスペルカード宣言のドット絵や裏最終符を見たときは、1面から全開の注力ぶりに度肝を抜かれたものである。また、ボスのスペルカードも、既存のものはこの作品に向けた再構築の上手さに、独自のものはそのセンスにそれぞれ感服。「Mystical Chain」で魅せたその手腕は未だ健在であった。
 道中はどうかというと、さすがに毛玉や妖精相手ではボス戦のような大暴れは出来ないものの、各面趣向を凝らした仕掛けや地形において、天候発現を始めとした技巧的な刺激が十分に楽しめる構成となっている。特に、終盤において天候が地形やゲーム進行にまで影響を及ぼすことに対しては、天候発現システムの活用の幅の広さに驚いたものである。さらに、気質掌握した敵に緋想の剣を決めたときの手応えと演出の中毒性はとても高く、その影響たるや敵の攻撃が妨害ではなく天候発現の絶好の機会にしか見えなくなってくるほど。かくして、道中でも天候発現を決めては自分のプレイに酔いしれるのであった。
 勿論快適な操作性は言うに及ばず、コマンド不要のボタン+方向入力だけで多彩なコンボが出せる簡便さ、魔法陣の付いた敵をある程度自動で追尾する仕様など、快適にプレイするための配慮も着目すべき点である。その上で、天子の行動に対する優れた演出に、それを存分に発揮できる舞台がしっかりと用意されており、かくして自分のプレイに魅了されるに至ったといえる。

 物語は「東方緋想天」の後日談的内容。中盤くらいまでは割と暢気な展開なのだが、諏訪子の口から真相が語られてからは一気に深刻度が加速し、そこに追い打ちをかけるがごとく衣玖の決意が明らかにされる。
 終盤の畳みかけるような展開に天子への感情移入の度合いが急上昇。投げつけられる辛辣な台詞に必死に答える姿を痛ましく感じ、最後の戦いに挑む前の啖呵を頼もしく思い、エンディングでは衣玖と同じ感慨を抱くまでに。また、台詞の端々から、紫や諏訪子も完全に敵対するつもりは無かったのではないかという推測も成され、衣玖とどのようなやり取りが成されていたのか想像すると、更に話が膨らんでいく。

 楽曲に関しては、ボス戦におけるアレンジが戦闘の演出を受け止めて更に盛り上げる力強いものであることに注目。特に秀逸なのが鈴仙と諏訪子。鈴仙は1面から景気良く勢いのあるアレンジで気持ちも昂ぶり、抜群の掴みである。諏訪子は怒りを体現した荘厳なアレンジで、攻撃や台詞と相まって威圧感が凄いことに。
 「東方緋想天」の楽曲は、ゲーム自体全キャラクリア程度で終わらせてしまったので印象が薄かったのだが、この作品のアレンジのおかげでこれら楽曲の魅力を認識できた。タイトルの天衣無縫の哀愁漂うアレンジは、物語の全容が明らかになった後に聴くと、紫や衣玖達の想いと重なるものがあって染み入るものがある。これもループさせて聴き入るほどのお気に入りの1曲である。

 コンティニュー無しでの通しでクリアしたのだが、スコアに相当する徳点は最終的には各面クリア後の評価徳点の累計が相当するようである。評価徳点は技術点5項目と芸術点5項目の計10項目の評価に応じて徳点が加算されるというもの。技術点はクリア時間、リトライ回数、与ダメージ総量、被ダメージ総量、地脈鎮静率で特に異論は無いのだが、芸術点の方は個人的に割と同意できないものがあったりする。特に、気質掌握成功率は回避を行ったうち気質を掌握できたのが何割かというものだが、通常移動にも回避を使用する面構成になっているのにこの評価はやや納得しがたいものが。というわけで、動画では同意できない芸術点は無視した。
 といっても、徳点とか狙わなくても十分に楽しめる作品ではあるし、これら評価を狙ったらそれはそれで達成感も得られるであろうから、客観的に見れば瑣末なことではある。

 体験版の時点で傑作は間違いなしであると思ってはいたが、完成版をプレイして改めてあらゆる面での完成度の高さに驚くばかり。このような素敵な作品に出会えた喜びは、何物にも代え難いものがある。


氷室 万寿 |MAIL
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