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2009年03月12日(木) 光合成のこと

 今日の仕事。定期的にタップにプラグを抜いたり挿したりする。時々サンプリング。これを13時から23時まで。楽だけど退屈なので、定時後は試験室の掃除をしたり本を読んだり。というわけで、ブルーバックスの「光合成とはなにか」を読み返していた。実はこの本、昨年の10月29日に近々紹介したいと書いた本だったりする。あの後、本自体が行方不明になって書くに書けなかったという事態が発生して、見つかった今漸くこうして紹介できる運びとなった。

 さて、光合成といえば、植物が太陽の光を使って二酸化炭素を取り込んで酸素を吐き出すというあれである。こんなことは小学校でも習うことだが、では植物が取り込んだ光をどのように運んで、どのような形で植物が利用できるエネルギーに変換してというような具体的な仕組みとなると知っている人は途端に少なくなるのではなかろうか。斯く言う私もその一人だったが、この本は植物の中で光合成がどのような仕組みにより行われているのかを分かりやすく記してあり、大変参考になった。
 そして、それ以上に光合成を行う様々な組織の実に巧みな構造には感嘆の声を上げざるを得なかった。よくもまあ、長年の進化の結果とはいえここまで合理的な仕組みを組み上げたものである。太陽の光エネルギーを効率的に吸収、運搬し、そのエネルギーを無駄な熱に変えることなく利用する巧妙な仕組みとか、光合成の進化の過程など、陳腐な表現になるが生命の神秘にはただ畏敬の念を抱くばかり。私が最も感銘を受けたのが、光を吸収するための色素が並んだアンテナと呼ばれる組織であるが、その色素の配列は外側が短波長(高エネルギー)の光を吸収して、内側に行くに従ってより長波長(低エネルギー)の光を吸収するように並んでいる。すなわち、高エネルギーの光から順に吸収していくようになっている。そして、アンテナで吸収された光はその先にある光エネルギーを生体エネルギーに変換するための組織に流れていくのだが、この色素の配列のおかげで吸収されたエネルギーは高い方から低い方へと実に自然に流れていき、吸収した光エネルギーを無駄なく活用できるようになっている。
 ただ、光合成は何段階もの複雑な生化学反応で進むので、その解説で酸化還元という単語が頻発したり(これが光合成の本質なので仕方ないのだが)、酵素の名前がいくつも出てきたりと、どうしても専門的な用語が出てきてしまうのはいた仕方ないところであるが、それを何となくで読んでいっても一応分かるような内容にはなっている。
 ともあれ、光合成は地球の生態系を支える礎となっている植物の生命活動の基本である。この本を読めば、きっと植物に対する見方が変わることであろう。
 これは余談だが、理解が進むことによって失われる信仰がある一方で、この光合成のように理解が進むことによって得られる畏敬の念もあるわけで、理解が進むことは良いこともあるよなぁ、とこの本を読んで思った。あと、このような自然科学に対する教育が浸透すれば、環境問題への関心もまた進むのではなかろうかとも思った次第である。やっぱり、教育は大事だねぇ。


氷室 万寿 |MAIL
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