パラダイムチェンジ

2006年08月08日(火) 亀田選手にかけたい言葉

日曜日の朝、TVをつけたら「サンデージャポン」をやっていて、
そこに今話題のボクシングの亀田興毅選手が出演していて、周囲の
出演者たちがしきりに亀田君は悪くない、と擁護しているその空気の
微妙な感じにいたたまれなくなり、すぐにチャンネルを変えてしまっ
た。

なんでそんな空気を寒く感じたんだろうと思ったときに、多分、亀田
選手自体は、自分の実力を評価してほしかったのに、今回のTV番組で
擁護している人たちが言ってることって、亀田親子のサクセスストー
リーみたいなものについての評価だったからかもしれない。
って、本当にちょっとしか見てないのでわからないのだが。

本当は、亀田選手がかけてほしかった言葉って、今回結果的に世界
チャンピオンになれてもなれなくても、「今回は自分の実力が出せ
なくて本当は悔しかったやろ。次は頑張りや」って言葉なんじゃない
のかな。

ジャッジがどうのこうの、とか、そういう話について周囲が議論を
交わしているのを聞かされるのではなくて。


今回の、亀田興毅選手の騒動について、個人的に思うのは、日本の
世論(っていうか、世間の声)って、やっぱり凄いなあ、という事で
ある。

だって、TV視聴率50%超を取った番組で、疑惑?の判定が下された
瞬間、その番組を見ていたかなりの数の人が、一瞬にして「これは
八百長だ」と(ボクシングに詳しくても詳しくなくても)感じた訳で
しょ。

すなわち日本の中にある、世間という、はっきりした形はないけれど
この国を動かしている、法律すら超えた日本の倫理基準に照らし合わ
せた結果で言えば、今回の亀田選手の試合は、プロのジャッジが勝ち
と判定しても、国民的には「負け」「裏切られた」と判断したわけで。

もしこれが、TV番組の生中継で、50%なんて視聴率を取らず、他の
ボクシングの世界タイトル戦と同様に、よくて15%の視聴率だった
ら、多分同じことが行われたとしても、ここまで話題にはならなかっ
たと思うし。

そして、おそらくここまでネットが発達してなければ、この話が
これだけ大きくなることもなかったのかもしれない。
ネットって本当に、瞬間的に生理的な感情の爆発が加速しやすい
媒体なんだろうなあ、と思うし。

その意味では、今回、あまりにも多くの人の関心を集め、耳目を惹き
つけてしまったことが、亀田選手で商売をしている興行側としては、
一番の誤算だったのかもしれない。

早々、一度ついたレッテルをはがすのって難しいと思うし、また
おおっぴらにあおって、自分たちの(商売上のリターンの大きさとい
う意味で)掛け金を上げすぎた場合、それを取り戻すのは大変になり
そうだし。

だから少なくとも、亀田選手の周囲の大人の人たちは、これからどん
なシナリオが一番効果的なのか、今頃は必死こいて考えているのかも
しれない。


でもね、その一方で言うならば、亀田選手自身の人気の回復を図るの
は、そんなに大変じゃないんじゃないかな、という気もするのだ。
だって、ボクシングって本来は実力勝負な訳でしょ。

今回の試合で視聴者の何割かが、胡散臭く感じたように、逆に言えば
亀田選手が本当に強い相手と戦って、自分の実力を出せたなら、少な
くともボクシングファンの人の人気は勝ち取ることができるんじゃ
ないのかな。(今までそういう部分が作られてきたと感じる人が多か
ったからこそ、今のバッシングの現状があるんだろうし)

それにもしも、本当は世界チャンピオンになるだけの実力がなかった
んだとしたら、それでも亀田親子が本気で世界チャンピオンを獲りた
いのなら、何回でも挑戦したってかまわないんじゃないのかな。

元世界チャンピオンのボクサー、辰吉丈一郎が、あれだけの人気を
博したのって、彼のキャラクターもさることながら、周囲の反対を
押し切っても、網膜はく離になっても世界に挑戦し続けたからなん
じゃないかな、と思うのだ。
それだけ、彼が本気だったからこそ、最後まで(そして今も)ファンは
応援しているんだと思うし。

亀田三兄弟にしたって、世界チャンピオンを獲りたい、そして親父に
楽させてやりたい、と思う気持ちは、本気なんだと思うんだよね。
だからこそ、練習に打ち込んできたわけで。

果たして自分を含めて、それだけ何かに本気になって取り組んでいる
人って、この世の中にどれだけいるんだろう、とも思うのだ。

だからといって、本気だったら何をしても許されるのか、とも私は
思わないし、また、本気でやればなんでも願いが叶うとは思わない。
でも本気って、こういう結果が用意されているから頑張るってもん
でもないだろうし。


今回の亀田興毅選手の世界挑戦には、例えば無敗神話だとか、10代で
の世界王座奪還とか、いろんなストーリーの尾ひれが付きすぎていた
と思うんだよね。

でも、亀田興毅選手の本当のファンがいるとして、彼ら彼女らが見た
いと思っているのは、彼が真剣勝負で戦っているその姿なんじゃない
のかな、とも思うのである。

この亀田戦の行われる数週間前、大相撲では、大関昇進後、最短での
横綱昇進がかかった白鵬関が、13勝2敗、千秋楽では横綱朝青龍関に
勝ったにも関わらず、内容が悪いとして、横綱昇進を見合わせられ
た。

果たしてこの事が本当に白鵬関によかったのか悪かったのかはわから
ない。もしかすると怪我をして、二度と横綱になれるチャンスはめぐ
ってこないかもしれない。

でも、白鵬関が本気で横綱を目指して励むのであれば、たとえ彼が
横綱になれなかったとしても、彼を応援し続けるファンは増えるん
じゃないのかな。

まあだから、個人的には亀田選手にも、「次は頑張りや」と言いたい
のである。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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