2004年03月11日(木) |
ミスターという存在感 |
先週の木曜日、ミスターこと長嶋茂雄が脳梗塞で緊急入院した。 幸い発見が早く、その後の加療も順調で、生命の危機などには発展 しなかったようだ。
1週間経った今日、主治医による、記者会見が行なわれた。 とりあえず、急性期の危険な事態は脱し、これから地道にリハビリが 行なわれることになったようだ。
病因は心房細動による中脳大動脈の閉塞による脳梗塞。すなわち、 血管に出来た微小な血管の内壁などによる血栓が、脳にまで行き、 中大脳動脈という脳細胞を栄養する大切な血管でつまってしまった 為、血液が回らない細胞が死んでしまい、つまったことで栄養される べき部分に障害が残ってしまったという事である。
この時期に主治医の記者会見が行なわれた背景には、マスコミの ベッドで起き上がれた、や驚異的な回復力である、などイメージが 先行したことに対して、事実で釘をさしておきたかったって事だった と思う。
実際の長嶋監督の病状は意外に重く、障害が残ってしまう可能性に ついて、予め説明しておきたかったという事かもしれない。
実際に脳梗塞のリハビリを行なった経験のある立場で言えば、 長嶋監督の病状は、よくある右半身麻痺患者の病状を示している という事かもしれない。
今回、気になるのは、それが右半身麻痺、すなわち左大脳の梗塞で あったことである。左大脳には言語を司る部分があるので、意識が 戻った後も、構語障害といって、言葉が流暢に出なくなってしまう 事がある。だから、早期から言語療法を開始したとしても、すぐに あのミスター語録は聞くことができないかもしれない。
記者会見では、今後も急変する可能性など、リスクについての言及が あったけれど、血栓を出来にくくする抗凝固剤のコントロールは、 一般的によく行なわれている事であるし、いわゆる急性期の危険な 状態は脱したと考えていいんじゃないだろうか。
いや、もちろん血圧のコントロールとか、今後もリスク要因は色々 考えられるんだと思うけれど。
でも、ミスターだと体力も同年代に比べてもまだまだあるだろうから リハビリも常人よりはめざましい回復をはかる可能性はあると思う。 女子医大としても、ミスターのように世間一般に注目される患者だ ったら、最上級?のリハビリメニューを組むんだろうし。
逆に言えば、一つの目安ともいえる3ヵ月後に一体どのくらい、 ミスターの機能が回復しているのかを見るのが職業上、興味深かった りする。最先端?のリハビリがどんなものであるのか、おそらく マスコミが事細かに説明してくれるんだろうし。
一般的に考えた場合は、下肢の機能回復は問題なく歩けるようになる が、上肢、特に手指の巧緻性に関しては、障害が残る事が多いような 気がするが、果たしてミスターの場合はどの位、回復するんだろうか。
でも、毎日定期的に病状についての会見が開かれるあたり、ミスター という存在はやっぱり特別なんだと思うのだ。 同様に毎日会見が開かれた例なんて、天皇陛下位しか思い当たらない し。
アテネオリンピックの日本代表監督に関しては、回復の度合いを見て ということもあるだろうけど、正直個人的には遠慮した方がいいん じゃないかなあ、と思う。
元々読売グループが、というよりナベツネ氏がオリンピックにプロ 選手を積極的に送り出そうとしたきっかけは、朝日新聞が2002年の W杯の公式スポンサーになった事だと思うし。
ライバルに出し抜かれたことがよっぽど悔しかったと見えて、2000年 のシドニーオリンピックでは巨人軍選手を出すことに消極的だったの が一転、巨人軍選手と共に最後の切り札としてミスターをアテネ代表 監督にすえつけたような気がするし。
なんとなーく、戦前の統帥権を振りかざし、自らの権勢を振りまくっ た某国軍隊と構造的に似ていると思うのは気のせいだろうか。
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