たまには軽めの季節ネタなんぞを。
さて、東京も先週、とうとう梅雨入りした。 6月〜7月のこの間は、どうしても愚図つく天気になる。
一方で、6月は「ジューンブライド」と言って、結婚するには 一番の季節であるとされている。
これってなんか変じゃない? なんて疑問を持つまでもなく、「ジューンブライド」とは "June Bride"である訳だから、元々は、英語圏か、ヨーロッパ文化圏の 慣習である。 それを言葉と概念だけ、輸入したわけですね。
さて、6月、梅雨、花嫁と来ると、つい思い出してしまう文章がある。 前回も取り上げた作家、北村薫の小説 「夜の蝉」の中の一節。
《梅雨は英語で何というのですか?》 中学生の時、用事で職員室に行き、ことのついでにそう質問したこと がある。真面目にである。六月のこと、相手は勿論、英語の先生だった。
丸顔でいつもにこにこしていたその先生は、にやっと笑い、 《プラム・レイン》 番茶をサベッジ・ティーの類いだ。
《はああ》と訳の分からないまま感心しかけた私に、《大体が梅雨が あっちにはないだろう》と先生はおっしゃり、 《それじゃあ、六月は何という》 《ジューン》 《ジューン・ブライドって言葉は知ってるかい》 《はあ、何となく》 《あれだって、向こうでは六月が気候がいいからだろう》 《なあるほど》
頷く私に《僕ぁ、十月に結婚したぞ》などと、あまり本題に関係のな い注釈を付け加えてから、《無理にいうならレイニー・シーズンかな》 《雨の時期ですか》 《そう、雨季ということになる》 「六月の花嫁」より
考えてみたら、昨年の今頃も、北村薫の小説を取り上げていたんだった。 自分にとっては、やはりこのうっとうしい季節を忘れさせてくれる一服 の清涼剤、みたいなものなのかもしれない。
さて、こう考えると、新暦といい、ジューンブライドといい、現代の 日本人って言葉と概念だけ輸入して、ありがたがっている側面もある のかも。 2月14日のラバーズデイが、チョコレートの日に変化してしまった ように。
元もとの"June Bride"、インターネット で調べると、6月は、 古代ローマの結婚を司る女神、Junoから名前を拝借している所から この月に結婚すると幸せになるという言い伝えがあるらしい。
で、この話に関しては、実は個人的に思い込みをしていたことが判明 したんである。
てっきり、かつてのローマ皇帝、カエサル(ブルータス、お前もか、 のジュリアス・シーザー)が、6月と7月があまりに快適で過ごし やすい季節だったので、自分の特権を利用して自分と后の名前を 入れてしまった(6月が妻で7月が自分=Juliusの頭3文字) と思いこんでいたら、どうやら違ったらしい。
正確には、ジュリアスシーザーが、自分の誕生月である、7月に 自分の名前をつけ、その後同じくローマ皇帝になったアウグストゥス が、自分の名前を8月につけた(August)というのが真相であるらしい。 ついでに言えば、だから9月(September=seven)になる訳だけど。
うん、やっぱり調べてみるもんだ。
でも、これは全くの想像だけど、6月の花嫁が、特別扱いされる理由 の一つには、6月と7月がヨーロッパの人たちにとってみれば、 特別な月である、という事も関係しているんじゃないのかな。
ヨーロッパは日本の北海道よりも高緯度に位置している地方が多いから、 一般的に冬が長く、夏は短い。 で、6月7月は、6月22日が夏至であることからもわかるように、 彼らにとっては最も日の光を浴びることのできる期間、すなわち 光り輝くサンシャインデイな訳だ。
実際、この時期、彼らはよく日光浴をするらしい。 だから、その時期に結婚式を挙げたくなる気持ちはわかる気がする。
ついでに言えば、ヨーロッパの学校の多くが、9月に開講し、5月で 終わる理由の一つには、やはりこの光り輝く季節に、校舎で勉強なんて してられるかい!みたいな気持ちがあるのかもしれない。
大体サッカーだってこの時期はオフで、皆バカンスを楽しんでいるみたい だし。
ただし、日本においては、6月というのは、大体においてジメジメした 季節であるわけだから、結婚式の料金も高く、スケジュールも詰まって いそうなこの時期よりは、五月晴れで新緑が息づいてくる5月か、 せめて6月の梅雨入り前位が、結婚式のベストシーズンであるような 気もするんだけど。
ただし、これはあくまでネット上での噂みたいなものかもしれないが、 一説には、それこそバレンタインデーのように、日本の結婚業者が、 この梅雨の時期はどうしても結婚式需要が下がってしまうので、6月は ジューンブライドといって、この月に結婚した花嫁は、特別に幸せに なれます、なんてキャンペーンをはったのが、日本でこれだけ認知される ようになったきっかけである、なんて話もあるようだ。 ちょっと信憑性があるような気も。
まだまだ自分には縁のない話なんで、余計なお世話ではあるんだが。
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