2003年05月18日(日) |
Number 576号から |
現在発売されている雑誌Number576号で、マリナーズの長谷川が ヤンキース松井との初対決を振り返っている。
TVのニュースでは、「松井君が試合前にやってきて、長谷川さんの本を 買いましたって言われたんでヒットを打たせてあげました(笑)」なんて ジョークを飛ばしていた彼だけど、今回は真面目に?振り返っている。
初対決は、たったの2球だった。 「松井君のことはテレビでは見ていましたが、正直、知らないバッター でした。日本で一度対戦してますけど、ちょっと簡単に考えていたとこ ろもありましたね。僕のシンカーだったら、何球投げてもポーンと打ち 上げてくれる、または引っ掛けてくれるような雰囲気がありましたから」 マリナーズの長谷川滋利は、ヤンキースの松井秀喜に対する第一印象 をこう語った。(略)
「初球の空振りを見て、『このシンカーは今の彼には打てない』と閃い ちゃったんです。それで同じ球を、スピード少し速くしただけで真ん中 に投げちゃった(笑)。少し安易でしたね。僕は松井君はアメリカ人的な バッターなのかなと思って同じ球を続けましたけど、日本人的な巧さを 持ったバッターでしたね。だからこそこっちのナスティ(汚い)なボール に苦しんでいるんでしょう。日本のピッチャーはみんなスピンのかかった きれいな伸びのあるボールを投げるじゃないですか。でも、アメリカの ピッチャーは意図して手元で変化させる。ウチの投手陣は特にナスティな ボールを投げるピッチャーが多いから、そりゃ、松井君も苦労したと思 いますよ。きれいな回転のボールを投げるのはアーサー(ローズ)くらい かな。でも彼の球はきれいだけど速すぎるし。僕も汚いボール、投げま すよ(笑)。試したいことはまだ他にもいっぱいあったんですけど、何も できないうちに終わっちゃいましたね」
日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグの球質の違いについては、 いろんな人が指摘しているけれど、「きれいな回転の球」と「ナスティ な球」と言われると、なるほどそうかと思ったりする。
アメリカの投手というと、どうしてもランディジョンソンみたいに 160kmのスピードボールを投げると言うイメージがあるけれど、 全員が全員、そんなスピードボールを投げられるわけではないし、 過酷な生存競争を勝ち残るためには、そういうナスティなボールも 投げられないといけないわけだ。
そう考えると、日本の速球派投手の球が易々とメジャーの選手たちに スタンドへと運ばれてしまうのも頷けるような。
ちなみに次回、長谷川と松井の対決の可能性は8月。 それにしても、マリナーズvsヤンキースっていう日本人にとっての人 気カードを、ゴールデンウィークと、夏休みに持ってくるあたり、MLB もさすがと言うか、そつがないと言うか。
さて、松井選手、今のところ5番打者の打撃成績としてはいまいちパッと していない割に、ヤンキースファンからはそんなにバッシングを受けては いない。例えば昨年移籍した当初、打撃不振だったジェイソン・ジアンビ は、打席に立つたびにブーイングを受けたりしていたのに。
その背景としては、今のところチームの成績がいいという事と、あの本拠 地デビュー戦での満塁ホームランが、ヤンキースファンの心を見事にGE Tしたって事も大きいとは思うんだけど、もしかするとあともう一つ、 あまり目立たない理由があるような気がする。
昨年までのヤンキースの場合、レフトにレギュラーが定着せず、守備の 不安が唯一残るポジションがレフトだったんだけど、そこにきちんと守 備のできる松井が入ったって事が大きいような気がするのだ。
つまり、長年のヤンキースファンにしてみたら、今までダメだったレフト に、いい選手がやってきたって事が嬉しい訳だから、多少の打撃の不振は 今のところ大目に見てあげよう、って感じなんじゃないのかな。 その意味でも、今季ヤンキース入りした松井はラッキーだったと言えるの かも。
なんて思っていたら、現地時間で5月17日のデーゲームでは、守備で 二つの失策を重ねてしまい、早速ブーイングを受けていたみたいだけど。 ドンマイドンマイ。 人柄はちゃんと評価されているらしいし、これからっすよ。
さて、Number576号はメジャーリーグ特集なんだけど、その中 でイチロー選手が、自分の4月の打撃不振について振り返っている。 4月の成績に関しては「そりゃ屈辱ですよ」らしい。
その原因に関して、イチロー自身が分析していて面白いのだ。 詳しくは、雑誌を手にとって読んでもらうとして、かいつまんでみると、
イチロー自身の打撃に対する意識改革が進んだ結果、体の感覚として、 「ヒットにできる」と判断するポイントが劇的に増えたんだけど、その 結果、頭ではヒットにするのは難しいと判断している難しいボールに対 しても、思わず体が反応してしまい、ミスショットが増えてしまったらしい。
イチロー曰く、 「打てると思うポイントが広がって、ヒットを打つのが難しいはずのボー ルでも打ちに行っていたら、だんだん、完全に捉えられなくなってきた。 なぜだかはわかりませんけど、体の使い方に問題が出てきてしまったのか もしれません。
だから、打席ではいつも何かを考えながら、微調整をしています。意識を 置くポイントは時期によって足だったり、手だったりするんですけど、 少しずつ自分の中のイメージに自分の形を修正しています。単に打つこと を繰り返しているだけじゃ、ダメです。そんなに簡単なものじゃない。
どうすればいいのかも、もちろん見えています。それはずっと見えていま すし、だいぶ取り戻せたという実感も持てています」
不振の4月とはうって変わって、現時点でのイチローの5月の打撃成績は 4割5分にせまり、通算打率も3割を超えた。 果たしてイチローが今後どんな活躍をするのか、楽しみになってきたと 思う。
この記事の最後は、イチローのこんな言葉で締めくくっている。
「僕は常に戦っています。苦しいのは当たり前だし、それもメジャーで 野球をやる楽しみの一つなのかもしれません。一番苦しいと感じるのは、 できるのにできないということ。相手にやられて、とてもそんなことは 自分にはできないと思えるのなら、まだいいんです。それは自分の力の 無さですから、しょうがない。でも、できるはずのことができないから こそ、歯痒いし、悔しいんです」
イチローが、ヤンキー・スタジアムのバッティングケージのところまで 挨拶に出向いた松井と握手を交わした時のことだ。「アジャストするのが 大変です」とこぼした松井に対して、イチローはこう言ったという。
「いいじゃん、だって日本ではそんなことはなかったんだし、それが楽し いんだからさ」
ますます今年の彼の活躍ぶりが楽しみである。
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