パラダイムチェンジ

2003年03月18日(火) パンドラの匣

パンドラの匣

今日は仕事は休みで、自宅待機中。
なんでかっていうと、自宅のマンションの排水管の取替え工事中
だから。
なので、せっかくの休みなんだけど、自宅にいるしかないので
こうして日記を綴っているわけだ。

で、工事中の自宅にいて初めて気づくのは、とりあえず、すっごく
うるさいって事である。
今回は、階下の天井を通っている排水管に直接排水溝を通すために
基礎のコンクリートに穴をあけている。
って事は、結局自分のうちで道路工事をやっているようなもの。

いやー、こんなにうるさいとは思ってもみなかった。
これだったら、歯医者さんに通っている方がマシかもしれない。
その意味で、日々こういう環境で働いている工事関係者の方々には
本当、頭が下がる思いである。


さてついにというか、とうとうブッシュ大統領が、イラク攻撃に
ついて、国連安保理での承認案を取り下げ、イラク政府に対して
最後通牒をつきつけた。

これで、武力行使に対して、当事者以外が何かをする機会は失われ
あとは、米国、英国がいつ、武力行使を行なうのか、そしてそれに
対して、イラク政府がどうするのか、というフェーズに移行したこ
とになる。

イラク政府と、それをとりまく米・英・西(スペイン)の多国籍軍。
91年の時と、状況は変わらないはずなのに、何故今回はこんなに
違和感を感じるのか。

湾岸戦争と、今回の武力紛争と、違うのは国連安保理の承認をもら
ったか、どうかの違いしかないのに、自分の心にはどこか棘がささ
ったように感じるのは、一体何が原因なのか。

おそらくそれは、今回の武力行使の理由に大義、というか説得力を
多くの人が感じないから、なんじゃないだろうか。

あの9.11以降、アメリカという国が、猛烈に怒っているのは
わかるけど、残念ながらその怒りは、国際的に共有されるものでは
ない。

もちろんアメリカには、アメリカなりの大義があるのかもしれない。
でもね、傍目にはその大義って結局は、史上初めて自国領土を攻撃
されて、初めて自分たちが標的にされたという怒りだけなんだと
思うのだ。
石油利権やら、イラクにアメリカ好みの民主的な政府を樹立するって
いうのは、あくまで後付けの理由であって。

ただ、問題なのは、そこに国民のナショナリズムを刺激する装置が
付随していることだろう。
超大国が、ナショナリズムに目覚め、物事をシンプルに考えてしま
う事ほど、厄介な事はない。

そして、今この時点でイラク政府という独裁国家をつぶすことより
は、アメリカが孤立し、独走してしまう事の方が実は大きな脅威に
なるような気がする。

つまりアメリカ政府としては、いかにイラク政府が危険であり、今
武力行使をして、イラク政府を打倒すべきであるかを力説したとし
ても、その理由に周囲の人間の納得がいかない限り、それはただ単
にキレてナイフを振り回している、そんじょそこらのガキと変わら
ない。

むしろ、世界で一番の大量破壊兵器を持っているのはアメリカであ
るわけで、そんな武器をむやみやたらに振り回す、あなたの方が危
ないでしょ、なんて事になるような気がするのだ。

英国を除く常任理事国、フランス、中国、ロシアが修正決議に対して
拒否権を発動しようとしたのは、何も平和を希求したという単純な
理由ではなく、もちろんそこには自分たちの発言権というか、存在
感を主張したかった、っていうのもあるんだろうと思う。

できればアメリカの突出に対して、国連安保理という枠組みで
抑えたかったって気持ちはあるはずだ。

でも、特にフランス、ドイツがアメリカの行動に対して強硬に反対の
意を唱えた訳は、もう一つあると思うのだ。

それは20世紀の前半、大国がナショナリズムを行動規範として
行動することがどれだけ迷惑な事なのか、加害者と被害者として
身にしみてわかっているからなんじゃないだろうか。

ヨーロッパであれだけ反戦の機運が盛り上がったのは、もしかする
と60年前の悪夢の記憶が、まだまだ色濃く残っているからなのか
もしれない。

そして、同じことは、60年前同じくナショナリズムに振り回され
た、この国にも言えるはずなのだけれど。
それは、「あやまちはもうくりかえしません」と、形だけ謝って、
歴史教育を怠ってきたせいなんだろうか。
今回の日本の対応については、またの機会に考えるかもしれない。

ただ、個人的に思うのは今回の決定が契機となって、アメリカに
限らず、国際的な抑止力から外れて独走する国が今後も出てくる
可能性を増やしてしまったような気がするのだ。

それはまるで、パンドラの匣を開けてしまったようなものなのかも
しれない。
そしてあえて推論に推論を重ねれば、この状況こそ、あのオサマ
ビンラディンが、思い描いていた世界なのかもしれない。

せめてブッシュがパルパティーンではないことを願うのみである。



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