掛川奮闘記

2007年06月09日(土) 070609_脱悲観論〜年に一度の夏富士会議


  今日から明日は伊豆である会議に出席です。

 ある会議とは「夏富士会議」と呼ばれるものですが、主催者は某世界的外資系コンピューター企業のIB●で、場所は伊豆天城にある会社の保養施設。出席者は30〜40歳代の各界の気鋭の論壇といったところ。

 出席できるのは年齢的に卒業した方からの推薦を受けたうえで、事務局が認めた方だけというのでなかなか厳しいものです。

 私は昨年から参加させていただいていますが、官僚、マスコミ、政治家、大学の先生、企業家、スポーツ選手、大手企業の幹部候補生など多士済々。一度この輪の中で意見交換を楽しめると、年に一度の同窓会のようなもので仲間に会うのが楽しみになりますし、いろいろなところで同士の活躍が目に付くようになります。

 今回は総勢49名の参加で、新人は14人。新しい人の新しい情報がああると会の新陳代謝も盛んで実に新鮮です。

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 会議には毎回テーマが設定されるのですが、今回のテーマは「脱悲観論」です。

 その趣旨は、「2007年の幕開けも日本人の悲観論に拍車をかけるようなニュースや評論が飛び交った。イジメによる自殺、政治と金、官製談合、格差社会、少子高齢化の進展などなど…。特にマスメディアには悲観論が渦巻いている。日本人は一体どこまで悲観すればよいのだろうか。悲観論が本当に日本を見失わせているということはないのか。今我々に必要なのは、あえて悲観論に挑戦するポジティブ思考ではないのか」ということ。

 そして「悲観論と危機感は確かに重要な役目を持っている。しかしそろそろ悲観に勝る思考方法を模索し始めても良いではないか。…自己卑下に陥っている場合ではない。今こそ日本の良い点を見直し、世界に広めるべき日本を再発見し、受け身ではなく自ら主張を始めるときである。おごることなく、しかも悲観することのない日本、そこに住みたい、働きたいと思える日本を、我々一人ひとりが築くのである」と続く。

 今回は、もう悲観論を止めてはどうか、という趣旨で、「脱悲観論〜いいじゃないか日本」をテーマに一泊二日で、日本中からの論客たちが意見を交わすのです。

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 プログラムはまず基調講演から。

 基調講演の講師は、マスコミでもおなじみ、コロンビア大学教授のジェラルド・カーティス先生。

 先生は幾つかの観点で脱悲観論から日本論を語って下さいました。先生曰く、

「日本は悲観論が大好き。日本の政治には悲観論が多いのですが、一方アメリカは楽観的です。日本で小渕さんが首相の時に『改革しないと明日はない!』と言っていたときにアメリカのビル・クリントンは『21世紀に架かる橋を…』と言っているのです」

「小泉さんが人気があったのは彼が日本の政治家では稀なほどに楽観的だったから。彼は単純で『頑張れば良くなる』と言いましたが、他の政治家は『頑張らないと悪くなる』と言い続けたのです」

「今の安倍総理には将来に向かうエネルギーを感じません。『戦後レジーム(体制)を脱却しよう』と言うのはどうも後ろ向きのような気がします」

「『憲法を変えては行けない』というのはおかしいと思いますが、何のために改正をしなくてはならないかということが明確には示されていませんね。○○をするためには憲法を変えなくてはなりません、というのでなければ、まさに『改正のための改正』ということでしかありません」

「政治家は国民に希望を与えるために楽観主義者でなくてはなりません。そう言う意味では民主党も『自民がやると悪くなる』というのでは反対のための反対と言われてしまうでしょう」

「日本の良いところを上げてみましょうか」そう言って先生は日本の良いところを上げて下さいました。

「日本語という言語の美しさがいいですね。漢字で書けない言葉を外国語を借りて作り出すセンス!フリーター、自転車ツーキニストなんて天才ですよ」

「謙虚さが良いです。『みのるほど頭を垂れる稲穂かな』がいい。ただしこれは少し崩れているみたいね」

「清潔さ。これが世界の中でどれくらいすごいことかわかっていない」

「集団の仲間意識・共同体意識、チームで仲良くやろうという気持ちがありますね。これまたいい」
 なるほど、ここまでは日本人論を大いに持ち上げて下さいました。

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 しかし、直すべきところもあると思いますよ、と今度は辛口の日本人論の番です。

「今回のテーマは一種の日本人のアイデンティティ論にも思えます。日本人は黒船でペリーが来てからアイデンティティを考えるようになったと言われるけれど、日本人は日本人なのであって、私はアイデンティティをこんなに考えなくて良い民族は他にはないのではないかと思っています。だってアメリカ人だったら、(俺はヒスパニック系アメリカ人だ)とか(ロシア系アメリカ人だ)とか(イスラム系アメリカ人だ)なんて、いつも悩むアイデンティティがあるけれど、日本人は日本人でしかないでしょ」

「日本人のアイデンティティと言うときには、日本人は『どうありたいか』ということよりも『どう見られたいか』ということに力点が置かれているのではないでしょうか。そしてそう言う意味では、日本人はいつも『世界から馬鹿にされているのではないか』と自己卑下をしがちです。しかし私の見るところ、外国はみな日本のことは尊敬していると思って良いと思うのです。敗戦からこれだけ世界にキャッチアップした国はないのですよ」

「そして日本があまり本格的に意識していないと思われるのは、『日本は世界の中のグレート・パワーになりたいと思っているのか』ということです。そうなるためにはもっと大きな責任を負うことにもなるでしょう。日本はどうなりたいかがあまり明確には見えません」

「しかしやはり、今日のテーマで言うと日本は悲観しすぎることはない、というのが私の結論です。最近は格差が問題となっていますが、アメリカのハーレムにおける格差というのは絶望的です。それに比べると日本の格差などは楽観的に考えて解決できる問題に思えます」

「悲観しない、否定しない、外国を参考にしながらイデオロギーを抜きにして前向きに、失敗を恐れず、リスクを恐れない、そういう生き方が良いのではないでしょうか」

 全編を通じて、ユーモア溢れる語り口といろいろなエピソードが満載で誠に楽しい講演でありました。なるほど、講演ってこういう風にすると楽しいんだな、と思わせてくれるお話しばかり。

 さて、これを元にして、今度は参加者たちが5つの分科会に分かれて討論を行うのですが、これがまた議論百出で、楽しい時間。

 つづきは明日のお話しに。


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