ひだの奥の奥、仕舞われてしまった隠しファイル どうしても見たくって次々に開いていく 心を砂漠のようにからからにしながら次々に開いてみる 砂粒を吐き出しながら開いていく どこまでいっても飛び出してくるのは 真っ黒な数珠球 数珠だまを噛んでつぶした そこからあふれてきたものは壊れてしまった文字たち ”あ”という文字は横棒がない ”き”という文字は縦棒もない どれを見てもどこかが欠けて・・・ とどまることなくつぎつぎにあふれてくる 私はあせって、ぜんぶを数珠だまに閉じ込めていく 次に噛んでみた玉は 涙のかけらが詰まってた 壊れた涙 とんがっててガラスのように光ってた とがったガラスは小指を刺した ぼとぼとと赤い血がこぼれて数珠だまを濡らしていく 私は涙を流しながら、ぜんぶ数珠だまに閉じ込めてゆく 次に噛んでみた玉は 壊れたおんぷが詰まってた 四分音符には尻尾がない 十六分音符には頭がない 勝手やたらにおとがあふれる 抱えきれないほどの壊れたおたまじゃくし達 今も流れるなみだの川が おたまじゃくしたちを浮かべている おたまじゃくしは玉に戻すまい 私は、 吐き出した砂粒をすっかり拾い集め 音符の入っていた玉にいれ 最後に黒い数珠だまを糸で次々につないでいった
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