店主雑感
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歴史上どの時点から近代と呼ぶのか自信は ないが、普通はフランス革命、人権宣言、産 業革命以降を言うのではないかと思う。
産業革命以前の世界というのは簡単に言っ てしまえば、より多くの人間を食べさせるこ とが出来るグループが他のグループより優位 に立つという構造であり、そのための食料増 産と領土の保全拡張であった。
おりしも、数の上では多数派の食料増産チ ームが少数特権階級の領土保全拡張チームの 腐敗と搾取に対して、いい加減うんざりしは じめた矢先に産業革命は起る。
技術革新によって食料や生活物資の生産に 専門的職人技を必要としなくなったのと同様、 近代兵器の出現は領土の保全や拡張に必ずし も、かつての武力担当者を必要としない状況 を生み出した。
以後、ヨーロッパの強国は国民皆兵による 動員力と自給量を凌駕した生産力にものをい わせ、市場獲得と産業資源獲得の一挙両得を 狙い、アフリカ、アジアへ争って植民地支配 を押し進める。
やがて後発の新興勢力も市場獲得に動き出 し、二度に渡る世界大戦が起こる。
そして、この二度とも、国外に市場が欲し いてんでは本来新興勢力であるはずのアメリ カは途中まで中立を決め込み、新旧両勢力が ある程度ラウンドを消化して疲労する頃合い を見計らっては、口実(一度目はドイツ潜水 艦による客船撃沈、二度目は言わずと知れた パール・ハーバー)を設け、旧勢力に恩を売 りつつリングに乱入、新興勢力のライバル達 を一掃してしまうという、ギャングでもちょ っと顔が赤くなるような汚い手をつかい、ど さくさまぎれにソビエトが手を出そうとする と、今度はいきなり、禁じ技原子爆弾を炸裂 させて、ゴング終了である。
世界がようやくダメージから回復して、起 き上がってくる頃には、アメリカ一人がすっ かり水をあけており、その差は容易に挽回で きない。
そうこうするうちに、アフリカ、アジアも 次々と独立を果たし、民俗自決、内政不干渉 を唱えるようになる。
技術の進歩は更なる余剰製品の供給を促す。
最早、そうそう都合の良い新規市場獲得が 望めない以上、市場内の需要を拡大しないか ぎり供給過多に陥り、製品価格は暴落せざる を得ない。
市場の規模が同じままで、需要の拡大を計 るには人間一人一人に、いままでの五倍、十 倍消費してもらう他はない。
そこで登場するのが個性的で自分らしい生 き方という手品か魔法のような解決策である。
昨日、自分らしさを表現できたライフスタ イルも今日は充分自分らしさを表現している とはいえない。 何故なら昨日のあなたと今日のあなたでは すでにちがっているから。 あなたという人間は常に新しく生まれ変わ っているのだから。
近代とは人生の減価償却項目に旧式化、陳 腐化という資産価値下落要素を盛り込んで、 つねに新たな投資を促すシステムが誕生し、 確立した時代といえる。
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