きりんの脱臼
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2004年07月27日(火) なかはられいこ

えいえんをほしがっているドラゴンの翼のうえで抱き合いながら  村上きわみ





K駅を過ぎると真夏の日差しが戻ってきた
田んぼの畔に白黒のまだら模様の傘みたいな木があって
よく見ると白く見えるところには鷺がとまっていて
黒く見えるところには鴉がとまっているのだった
木は鳥たちを頭上に抱きかかえたまま
浅緑の真ん中に立ちつくしていた

あれは懐古だ

鳥の
そして、わたしの

伝えられなかった言葉
行かなかった場所
出会わなかった人

ありえなかったはずのことが
こんなにもなつかしい





きのうゆめのなかで
あたしは灰色の砂浜を歩いてました

空が灰色でね
海も灰色で
砂浜にはえんえんと足踏みミシンが並んでるの
真っ黒でどっしりとした足踏みミシンが
何台も何台も何台も何台も何台も
一定の間隔を置いて規則正しく並んでるの

見渡す限りの足踏みミシン

あたしは
ミシンとミシンの間を
縫うように歩いてました
しばらくゆくと
リュウ、あなたの声がした

呼ばれたような気がして振り向いたら
だれもいなかった

ここにはあたししかいない

砂の上に残ったあたしの足跡が
天空を駆け登るドラゴンみたいにうねっていました

ここにはあなたはいなくて
ここにいるあたしも
いるような気がするだけで
ほんとうは
いないのかもしれなくて

それでも、リュウ
だとしても
あたしがあなたをすきって
この気持ちだけはぜったいです

えんえんと続く
この足踏みミシンたちのように
それは確かなことです




えいえんは蝉のなきがら仰向けの         なかはられいこ


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