waning moon。 |
悲しいね。
そう彼女は言った。 公園のベンチに座るボクは 立ったままの彼女を見上げた。 右肩の向こうに下弦の月が鈍く光っていた。
悲しいよね。
彼女は繰り返した。 そう、悲しいよね。 ボクはそう返す事しかできなかった。
もう一緒に歩けないね。
そう言った彼女へ ボクは返せる言葉が思い浮かばなかった。
寒い。
そう言いながら彼女はきびすを返した。 じゃあね。とは言わなかった。 彼女もボクも。 一度も振り向かずに彼女は公園を出て行った。 その背中を見送りながらボクは息を吐いた。 白い吐息が水銀灯の光に吸い込まれると 夜の色が濃くなった。
そして彼女は想い出になった。 下弦の月も。
|
2006年01月18日(水)
|
|