危険域。 Master:(c)夏目

  過去 / / 目次 / 手紙 / HOME /




2006年05月05日(金) ■
咲き乱れる花弁は汚れた心そのもので








 [ アスランの明日はどっちだ! ]


 無事でよかった――――強い抱擁に息が詰まりそうになりながら、それでも腕の暖かさが嬉しかった。
 破砕作業で聞いた言葉が耳から離れなかった。
 再びモビルスーツを駆り、戦闘をした。
 慣れた感覚に高揚感を覚え、それに嫌悪した。
 旧友との再会に嬉しくもあったが、それがまた、どうして戦場なのか。

 ―――――それが運命だからさ

 あざ笑うような声を聞いた気がした。
 それでも、こうして我が身を案じて待っていてくれるものがいるという事実は、少なからず救いになった。
 戻れる場所がある、帰りを待っている場所があるというのはいいものだ。

 「カガリ…」
 「お前に何かあったら、わたしがキラに怒られる…!」




 ―――――それが運命だからさ






 End.


 060505//

 「相変わらずだな、イザーク」
 「貴様もな」
 「……ほんとに…」
 「な、泣くなよ!」

 泣くよ。





















 幸福な人間は、誰よりも残酷である。



 幸福である人間は幸福でない人間のように進むことが出来ない。
 幸福である人間は幸福でない人間のように進化することが出来ない。

 不幸を知らない人間は不幸である。
 不幸を知らない人間は進むことが出来ない。
 不幸を知らない人間は常に止まっている。

 幸福である人間は幸福しか知らない。
 幸福である人間は幸福でない人間を理解できない。
 幸福である人間は幸福でない人間のようには幸福にはなれない。

 不幸を知らない人間は不幸である。
 幸福である人間は幸福でない人間のように幸福にはなれない。





 ぼくはぼくとして生きるためにひとを殺します。
 ぼくはぼくとして生きるためにぼくすら殺します。
 ひとはひととして生きるためにひとを殺します。
 ひとはひととして生きるためにひとすら殺します。

 ひとがひととして生きるためにぼくは殺されます。
 ぼくがぼくとして生きるためにひとは殺されます。

 世界にはもう、だれも残りません。




 幸福論を説く人間は不幸である。
 幸せを仮想し実行しようとする人間は不幸である。
 多くを得ようと模索する人間は愚かである。
 自らを生かそうとする人間は自らを殺している。

 そうやって回る世界を理解すること、それ自体が無意味なことである。

 無意味であることに意味を持たせようと思うことは意味のないことである。
 それを理解し、胸に収め、記録に残すことすら無意味である。

 無意味を知ることが人生である。





 きみは、だれかの糧で、いられるかい。



 ぼくはぼくであるためにひとを殺します。
 ぼくはぼくであるためにぼくすら殺します。

 ひとはひとであるためにひとを殺します。
 ひとはひとであるためにぼくすら殺します。

 存在の否定は殺人です。
 存在の消失は生死を問わず、無です。
 存在の証明は人類の問いです。
 存在の在り方は罪悪です。




 カテゴライズされたこの地球上に、救いなどない。
 分類され、整理され、管理されるシステムは破綻している。
 ぼくのとなりにひとがあるよう、だれかのとなりにぼくがある。
 けれどぼくはぼくであるためにとなりのだれかを殺さなければならない。
 人類が熱を上げる存在の証明には価値などない。

 となりにいるだれかを喰い、ぼくはぼくであるためにぼくすら殺して生きている。


 それがただの真実で、そしてまた、それすら意味などない。



 幸福である人間は幸福でない人間より不幸だからだ。
 不幸を知らない人間は幸福にはなれない。

 ひとはひとを搾取することでしか生きられない。
 ひとはひとを生かすことが出来ない。
 ひとは生まれながらにして不幸である。




 その結論が導き出しているものこそ、――――否、それすら無意味な。












 ではでは。
 本日はコレにて失礼


...Copyright(C)2004-2010 Reishi Natsume All Rights Reserved...