危険域。 Master:(c)夏目

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2004年08月11日(水) ■
 貴方は誰。

 

 
 
 
 「何処に行くんだい」

 そう言われた。
 何処に行くも何も…何処に行くんだろう。
 出かけようとしていた気がする。
 でも姿を見ると、それも違う。
 この格好で外には出られない。
 何処に行くつもりだったんだろう。

 「わかっているだろう」

 何か心に引っかかるものがあった。
 何か気になる。
 何かある。
 何だろう。
 何かを思い出す。
 
 「知らないはずはないんだよ」

 うん。
 知っているはずだ。
 だって覚えてる。
 何かを覚えてる。
 出かけているのに、出てこない。
 何だろう。
 確かに知っている。
 
 「さあ行くべきところへ、行っておいで」

 指を差された。
 上へ。上へ。
 家の中にいたはずなのに、見上げると空だった。
 まぶしい。
 今日はこんなに天気はよくない。
 だから布団を干すの諦めたのに。
 
 「早く」

 一瞬意識が飛んだ。
 見上げると空。
 見下ろすと地。
 あれ。地面がない。
 体が浮いていることに驚いた。
 周囲を見回す。
 ベランダの外。
 見慣れた地形。
 人の姿、猫の姿、子供が駆け回る。
 誰も気がつかない。

 「軽いだろう。知っているだろう」

 誰の声なんだろう。
 姿がないことに違和感を漸く覚えた。
 男の人だ。
 男の声だ。
 聞き覚えがある。
 何処で聞いたのだろう。
 知らないはずはないと自分が言っている。
 
 「――――」

 何かわからない言葉を言われた。
 否、ただ聞こえなかっただけだ。
 知っているはずの声。
 確かに知っている。
 貴方は誰だろう。

 「見てきなさい」

 空を指される。
 まぶしかった。
 貴方は誰。
 
 「戻ってはいけない」

 身体に戻ってはいけない。
 体から離れなくてはいけない。
 わからないながらもそう理解した。
 どうしてだろう。
 何故か頭がスッキリしている。

 「さあ、行きなさい」

 貴方は誰。
 その声は。
 確かに聞き覚えがあるのに。
 どうしても思い出せない。
 
 「知っているだろう」

 
 
 気付けば自分の身体を見下ろしていた。

 次の瞬間、落ちるような感覚に目を覚ます。
 
 まさに飛び起きるといった風に、体がはねた。

 明確に覚えている。
 
 夢じゃないと思った。

 耳に残る声。

 確かに聞き覚えがある。

 それは。

 それは。

 今でもわからない。

 でも幾度も幾度も聞いたことがある。

 確かに知っている声だった。


 貴方は誰。

 貴方は誰。



 見下ろした自分の姿は死んでいるようだった。

 いつの間にかまぶしかった空は暗闇に埋め尽くされていた。





 ではでは。
 本日はこれにて失礼。


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