道化者の憂鬱...紫(ユカリ)

 

 

虚ろな叫び声 - 2003年07月21日(月)

池袋は、高校時代から私の庭の様な
場所だった。特に東口は。
どこからか、いつからか北口が庭になっていた。
人の欲望の行き交う北口と私の中の記憶が揺れる。

今のデリで働き出してから池袋キャンセルは多数。
あまり行きたく無い場所になりつつある。
それでも、今日の指名は池袋。
重いカラダを引きずって池袋に向かう。
空は、どんよりとした厚い雲に覆われ気持ちの悪い
湿気と埃にまみれていた。

私を指名した客は、何か嫌な事を思い出さざるを得ない
客で、私はとても憂鬱な気分になった。
憂鬱な時ほど、饒舌でよく笑う様に私の神経はいつ
のまにか出来上がってしまった様だった。

へらへらとしていないと、もの凄い顔になりそうで
ずっとへらへらしていた。
「お洒落なんですね。お仕事は?(微笑)」

「会社経営ですね。」

青山で会社経営をしているらしい。デザイン、インテリア
何でもやるそうだ。自分で会社経営なんか言うヤツは好き
には絶対になれない。
若い髪型、髭ズラ、眼鏡、麻のシャツ、トッズの靴
全てに吐き気を覚えた。
記憶が蒸し返す。
金を貸した男もそうだった。
同じ事も言っていた。


早く終わらせたかった。
帰りたかった。
痛いだけの愛撫。
強くすれば、女は気持ちが良いと勘違いしている
独りよがりの愛撫。

記憶がフラッシュバックする。
全く同じ光景が蘇る。
違う人だと言い聞かせ、思い込ませ、嫌なのに喚起の
絶叫をする。気持ちが良いと思い込ませの為に。
早く終わらせて欲しい。
私のカラダに触らないで欲しい。
肌を合わせたく無い。
死んで欲しい。
ずっとずっと叫びたかった。
でも叫べなかった。
こんな風にしか叫べない自分を呪った。
叫んで叫んで叫び続けた。
空虚な叫び声は何処にも届かない。

手コキでシーツの上に放出させて、へらへらしながら
一人でシャワーを浴びた。もの凄く丁寧に洗った。
洗いながら、涙が溢れ胃が捻れてそのままそこで嘔吐した。

何をやっているのだろう。
何がしたかったのだろうか。
何の為にやっているのか。

全てがお笑い草だった。

へらへらした顔を作って、この後どうするか聞いて
ホテルでゆっくりして行くと聞いた言葉に安堵して
私は、今までに無い位のスピードで服を着て逃げる
様に部屋を後にした。

外は所々に青い空を覗かせていたけれど、私の中には
黒い雲がへばりついたままで、シアワセそうな人を見る
と殺したい位の気持ちのまま、次の客の所に向かった。

何も無い・・・。
意味も無い・・・。


-




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail Home

エンピツ