2009年04月11日(土) |
横浜国立大学での朴講演 |
みなさんへ 4月9日、横浜国大で「貧困・差別・抑圧の歴史と現在」という講座が はじまりました。14名の講師によるオムニバス講座形式です。 「授業のねらい・目的」として以下のことが記されていました。 <貧困・差別・抑圧が、過去のことでも他所の世界のことでもなく、 まさに現在のわれわれの問題であることに目を向け、現在における 問題や歴史的背景を知り解決の途を考察することを目的とする> 第一回目は加藤千香子教授が「戦後日本の「貧困・差別・抑圧」と抵抗― マイノリティの位置から―」のテーマで、「私たちの足元にある問題としての 「貧困・差別・抑圧」」と「当事者」性にポイントをおく、戦後の在日朝鮮人の おかれた位置をふまえて、日本社会のパラダイム転換となった「日立闘争」 について話をされました。 日立闘争のスライド上映があり、朴鐘碩から日立の社内の 様子、組合は社員(一般組合員)と協議しながら物事を 決めるのでなく、一定の選ばれた役員が会社経営陣と協議 して決定しているということ、マスコミで発表された会社の 不祥事などもその問題点を社員が話し合うことは全くないこと、 ただ黙々と与えられたノルマに向かってPCに向かい合い 仕事をこなすことを求められている、という彼の会社に対する 感想が述べられました。 また川崎市の「当然の法理」の実態、「門戸の開放」といわれて いても実際は「当然の法理」によって、職務・昇進が制限されており、 市職員はそのことの問題を自由に話すこともない、という実態に ついての解説もあり、それは川崎市や日立だけの問題でなく、 他の地方自治体、大企業、マスコミ・教育界においても同じだと おもって社会にでたほうがいい、という彼独特のエールが ありました。 300名近い参加者は、大学の授業を聴くというより、自分に 関係することとして朴鐘碩の話に耳を傾けていたという印象を 強くもちました。学生の次のような言葉が印象に残りました。 <朴さんの話を聞いて、差別・抑圧は思った以上に酷いと思った。それから30年ほど経って法律や企業のルールが整備され少なくなったといえるが、いまだに根絶されたわけではない。これから大事なのは、企業などの大きな組織に間違ったことは間違いだと言える勇気を持つことだと思う。> <「貧困・差別・抑圧の歴史と現在」という講義名をみて、やはり人種差別かとどこか他人事のように感じていました。ところが朴さんの話を聴くと自分の認識は甘く、「当事者」という言葉の本当の意味がなんとなく見えてきました。どこか過去のことと感じていた「貧困」「差別」「抑圧」という言葉も見方をかえれば、まさに自分にもかかわってくる。「パラダイムの転換」を起こした日立闘争の現在における意味は、行動することだと思います。>
<朴さんたちが闘った事実を絶対に忘れてはいけないし、伝えていかなければいけないと思います。最初、朴さんが企業内に自由がないという話をした時にはなんで差別の話のはずがこのような話になるのか、と不思議に思ったけれど、映像を見て、「どうして君達は自分の権利、自由を手に入れるために闘わないのか」と言われているように感じました。>
大学関係者の方は、日立のスライドと朴個人の話をセットにして学生と 話し合われる場をつくってみることをお勧めいたします。学生の関心事は 完全に前とは違ってきています。しかし彼らの大部分は、朴鐘碩が黒板に 書いた「当然の法理」という単語も、その概念も知りませんでした(学者の 中にも知らない人が多いので仕方がないといえばそれまでですが)。 過去の歴史だけでなく、日本は実際にどのような国で、外国人にどの ように対応してきたのかという事実をしっかりと伝える必要を痛感しました。 朴の話を聴く学生の態度は、「在日」に対して何か差別されている大変な 人でなく、緊迫した大変な状況に生きる自分たちの問題として考えて みたいという真剣なものであったことを報告いたします。
-- 崔 勝久
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