Spilt Pieces
2007年07月28日(土) 
現在、ネットオークションにはまり中。
普段滅多に服を買わないので、たまに買うと着潰してしまう。
お洒落嫌いなわけでもないんだけど…優柔不断だし、現実金欠。
パソコンが新しくなって動作性が向上したのをいいことに、今まで興味がありつつも手を出していなかったジャンルに。
数ヶ月に一度突然買うよりは、ちまちまとまずは数を増やそうかな。
なんて、普段会社ばかりでほとんど私服着ないくせに、いいのか?
まあ、飽きるまでぼちぼち。


外で、お祭りの笛と太鼓の音がする。
私は昔、嫌いだった。
転勤や転校が多かったから。
「仲間外れ」のテーマ曲のようで。
「地元大好き」と、何の照らいもなく言える人が、羨ましかった。
それと同時に、その場所しか知らなくてつまらなさそう、と、負け惜しみのようなことを思ったりもしていた。


いつの間にか、お祭りの音が、普通の音になった。
好きな町ができて、好きな音ができて、好きな仲間ができたから。
関わりのないお祭りは、夏の風物詩。
やっぱり、嫉妬だったのかもしれない。
あまり変わったつもりはなくても、年を取った。
珍しく、いい意味で。


先日、会社を辞めたいと上司に話した。
慰留された。
予想できたことだった。
それでも、断固として辞める気だった。
フリーターになることへの不安を、拭いたかった。
家族や彼氏や10年来の友人に、ぼやいた。
自分で決めたことなのに、自分で言ったことなのに、どうしてだろう、苦しくてたまらなくて。


仕事に未練はない。
むしろ、自分がどんどん歪んでいく気がした。
「普通の人」と一緒に仕事をしたいと思った。
敬語も使えず、自分に激甘で他人に厳しすぎる小学生のような30代。
自分の我儘を棚に上げ、一方的に非のないこちらを罵倒する50代。
取引先には、名乗らない、呼び捨て、高圧的、そんな人ばかり。
ハローワークと異なる勤務・給与形態を突然押し付ける本社。
話を聞くよと言いながら、結局自分の主張だけを通そうとする社長。
がんばってもがんばっても、ただ働いただけ損な会社だと思った。
辞めてやろうと思った。
自分の中に、正当性はたくさんあって、
周りも、
「もう十分がんばった、これ以上無理するな」
そう、言ってくれた。
涙が出てきた。


世間的には、履歴書一枚に記せることなんて、ほとんどない。
私がどんないきさつで辞めたかなんて、どうでもいいのだ。
むしろ、もしも勤めていた会社の悪口を言ったなら、それだけで即除外させてしまうに違いない。
辞めた理由をただ自己都合だと主張し、勤務期間の短いことを正当化するのは、とても難しい。
世の一部では、好景気らしい。
「売り手市場」なのだと。
けれどそれは、余程何らかの特殊能力がある人を除けば、一度社会に出た人間に適用されるものではなく、「上手にレールを歩いてきた」人にだけ与えられたチャンスなのだろう、と思う。
自己アピール力なんて、みんながみんな持っているわけじゃない。
私よりも下手な人だって、たくさんいる。
受験受験ととりあえず進学を進め、社会に出るときには「自己責任」。
生きにくい世の中だ、と思う。
賢くて、能力があるのに、苦しみながらレールを外れた友人を見ていて、特にそう感じる日々。
彼女は今も、自分のプライドを押し殺して、悲しいと言いながらそれでもパートに向かう。
何でだろう。


私が会社を辞めると話したと言ったら、彼女は言った。
「心のためにはもちろん辞めてほしいと思う。
でも、耐えられる?
そう簡単なものではないかもしれないから」。
実感がこもっていた。
興味のある仕事があっても、大学中退では採用してもらえない。
色んなことに対して好奇心があって、周りへの気遣いも完璧で、本当に魅力的な子なのに。
人をまとめるのだって上手。
自身も努力家で、どちらかというと完璧主義者。
だからだろうか、在学中に、心のバランスを崩した。
今も、病院に通っている。
一緒に電車に乗っていて、どんなに疲れていても迷うことなく席を譲る彼女は、それでも、自分が発作を起こして東京の駅でうずくまっていても、誰もが手を差し伸べてはくれないのだと、悲しげに笑う。
私は、そんな彼女が、心の底から笑える時代になればいいのに、と思う。
たまたま偶然、心の風邪が、在学中に出てしまっただけのこと。
卒業したいと言って、ほかの人には想像もつかないくらい、苦しい思いをして授業に出ようとしていた。
それでも、出られないと言っては泣いていた。
競争社会なんか嫌い、と思った。
彼女に出会うまでは、そんなこと、考えたこともなかったけれど。
やさしくて、強くて、ただ、ほんの少しだけ、他の誰かたちよりも感受性が敏感なだけなのに。


結局、私は、会社を辞めるのを保留することにした。
理由は、それでも好きな人たちがいて、困らせるのが嫌だったことと、単純に、金銭的に苦しくなるから、ということ。
社内で親しいおじさんに、胸の内を話した。
「俺も、ここがいい会社だとは思わない。
でも、もし少しでも迷っているのなら、あと少しだけという気持ちでもいいから、一緒に仕事ができると嬉しい」
上司にも、「悩みなら何でも聞くし、改善できるように最大限努力するから。だからもう一度だけでいい、考え直してくれないか」
嫌いな部長に言われたら、辞意は変わらなかっただろうと思う。
だけど、社内でほんの少しだけいる好きな人たちに、そこまで言われて、辞表を出す気にはなれなかった。
とりあえず、あくまでも、「保留」だけど。
そして結局のところ、私は、自分で何かを切り開いていくほどの勇気はなかったのだと思う。
中途半端な決意で辞めると言ってしまったものだと思った。
でも、それくらい追い詰められていたのは、否めない事実。


保留にしたことを伝えると、前述の彼女は、「そっか」と言った。
「自分だけは、大切にしてね」。
その言葉は、なぜか、他の誰に言われた言葉よりも、胸に響いた。
たぶん、彼女がすごく痛みを知っている人だからだと思う。
やさしい人だからだと思う。


みんなが幸せになれる時代が、いつか…。
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