Spilt Pieces
2003年07月03日(木)  関係
連絡を絶たれた。
さすがに、あそこまで露骨に嫌な感情をぶつけられるとゲンナリする。
彼女はしばしば自分のことを「汚れている」と言っていた。
そして私のことを「純粋」だとか「真っ直ぐ」だと言っていた。
私に対する評価には解せないが、本当にそう思っていたのだとしたら嫌われる理由もよく分かる。
分かるだけに悲しい。


彼女とは、何度か言葉を交わしただけの関係。
1つ年下ながら、水商売をやって生活しているとのこと。
そしてその生活を変える気もないらしい。
ただしゃべるだけで多収入を得られるし、真面目に働くなどばかばかしいと言っていた。
また、自分には真面目に働くことなどできないのだとも。
家には帰っておらず、交際相手との同棲生活を送っている。


自分とは全く違う生き方をしている人。
単純に、別の価値観に触れる機会があって嬉しかった。
「水商売しかできないだなんて、駄目な奴でしょう」
「あなたの生き方に口を挟む気はないし、本人が辛くないならそれでいいんじゃないかと思います。どの生き方がいいか悪いかなんて、他の誰かが決めることではないですよ」
本心だった。
少しずつ打ち解けて、彼女は職場の仲間のことや大好きな動物のことについて話してくれるようになった。
「店のトップの子なんて、1日で100万円くらい余裕で使っちゃうんですよ」
「そんなに何に使うんですか?」
「ブランド品とか…かなあ。でも私はそういう使い方はしないけどね」
知らない世界のこと。
彼女の言葉には時折自分を蔑視したような発言が含まれていたけれど、それでも根は真っ直ぐな人なのだろうということが次第に伝わってきた。
周りとの関係において、不器用なだけ。
自分には理解できない世界のことではあるけれど、説教くさいことなど言いたくなかった。
知らない経験をしている人には、知らない苦労が多い。
元々自分が持っていた水商売に対する先入観を捨てて、彼女の言葉に耳を傾けるよう努めた。
自分の話をしても、彼女には自慢話に聞こえてしまうようだったから、専ら話を聞く側だった。


話す機会が増えてくると、私が彼女を知るようになったのと同様に、彼女も私を知るようになったらしかった。
自分の話はあまりしていなかった。
ただ、話をしていれば何となく、私がどんな環境にいるかは分かる。
「最近は何をやっているんですか?」と聞かれて「卒業論文やっています」と答えると、「勉強ができる人はいいですね、大学に行けて」と言う。
お酒の話になったとき、「お酒は強いですか?」と聞かれたので「すぐに赤くなってしまうのであまり飲めません」と答えると、「そういう女の子ってかわいくていいですね」と言う。
自慢をしたいわけじゃない。
それなのに、私の状況そのものが彼女にとっては自慢に聞こえるらしかった。
大学へ通っていること、水商売の経験がないこと。
打ち解けられたと思ったのも束の間、彼女は私と話をしたがらなくなった。


嘘はつきたくなかった。
経験もないのに、知ったかぶって共感するのは上っ面の証拠。
彼女が素直に感情をぶつけてくる分、私もそれに対して誠実でありたかった。
そういう態度も含めて、嫌だったんだろうかと今になって思う。
彼女はいつも自分と私を比較しては、自分を卑下していた。
それを否定する言葉は、きっと彼女に届かなかった。
お世辞を言ったつもりはない。
だけど、水商売に就いていることをどこか自分でも納得していなかったかのような、「何かを変えたい」という無力感を帯びていた彼女には、白々しい言葉にしか聞こえなかったのだろうと思う。


私自身、精神的に荒れている時期があった。
誰の言葉も自分の中に入ってこない。
優しい人や理解ある人が、どうしてか嫌いだった。
自分にないものを持っている人が眩しくて、その光の分だけ自分の影が浮き上がって見える。
光のあるところには影があって、だからそういう人に近づきたくなくなった。
相手に悪いところなどないし、相手に何かをしてもらいたいわけでもない。
それなのに、話をすると痛みだけが残る。
いつの間にか、距離を置くようになった。
話すときには、望んでいないのに口から勝手に罵詈雑言が出てきた。
そんな自分にうんざりする。
だから、ますます距離を取った。
誰も悪くなくて、ただ相手を傷つけたという事実だけが残る。


もしも彼女が本気で私を「純粋」で「真っ直ぐ」な人だと思っているのなら、状況を考えみても、嫌われる理由はよく分かる。
そんなに綺麗なわけがないのに。
彼女は、肝心なところが見えていない。
確かに私は彼女と同じような生き方はしていないけれど、別の面で悩みもあれば考えることもある。
汚い部分だってたくさんある。
それなのに、彼女は表面だけで判断してその先を知ろうとしてくれなかった。
断ち切るのは、楽なこと
そして自分にも経験のあること。
それが分かるだけに、何だかとても切ない。
自分には何ができたのだろうと思う。
彼女のそんな心境まで配慮してあげられるほど、私は人間的にできてないという証拠なのだろうが。
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